“役者”勘九郎 襲名後初の現代劇
歌舞伎俳優の中村勘九郎(31)が、山田洋次監督(81)が演出を手掛ける現代劇「さらば八月の大地」(11月1~25日、東京・新橋演舞場)で主演を務める。現代劇への出演は約3年ぶりで、勘九郎襲名後は初。このほどデイリースポーツの取材に応じた勘九郎は「作品への取り組み方は、歌舞伎とそうは変わらないですね」と、役者魂を燃やしている。また、今年5月に次男が誕生したとあって、親としての愛情ものぞかせた。
勘九郎が舞台人として新たな一歩を踏み出す。勘九郎襲名後、初となる現代劇への挑戦。「得るものは大きいですよ。歌舞伎役者としてではなく、役者中村勘九郎を育ててくれると思います」と、己の成長に期待する。
1987年、5歳で歌舞伎の初舞台を踏み、現代劇も95年の「スタンド・バイ・ミー」を皮切りに経験を積んできた。「歌舞伎と現代劇では、伝承されたものを究極まで追い求める作業と、新しいものを一から作り上げる作業の違いはありますが、役に対するアプローチは同じ」。2011年1月の「ろくでなし啄木」以来となる現代劇だが、向き合い方は心得ている。
「さらば‐」は、太平洋戦争中の満州映画協会撮影所で、映画制作に取り組む人々の国境を越えた友情が描かれる。勘九郎は中国人助監督の張凌風を演じ、共演にはタッキー&翼の今井翼(31)らが名を連ねる。
山田監督から演出を受けるのは、07年の歌舞伎「人情噺 文七元結」以来で「リアルに出てくる感情を大事になさる方なので、一緒に稽古することは心のトレーニングになります」と信頼を寄せる。初共演の今井とは同学年で「ジャニーズで、フラメンコも積極的に取り組んでいらっしゃって、外にも目を向けておられる方なので刺激的」と、出会いを喜ぶ。
昨年12月には別れの悲しみとも直面した。父・中村勘三郎さんが他界。「父を思い出すことはしょっちゅう。習った役をやる時には必ず父の言葉が出てきますから」。偉大な背中を追うことはできなくなったが、新たな希望も生まれた。5月22日に第2子となる次男・哲之くんが誕生。「日々感情が出てくるのを見てると、楽しいですね。子どもから受ける影響は、すごくありますから。笑顔とか」と、わが子を思い相好を崩した。
「先輩や父から教わったことを、子どもたちにも伝えていけたら。1人1人持ち味が違いますから、いろんなものを吸収するスポンジのような心を持っていればいいんじゃないかな」。親から子へ、受け継がれる中村屋スピリット。これからは勘九郎が大きな背中を見せる番だ。