地井武男さんジブリ新作映画が遺作に
昨年6月に亡くなった俳優の地井武男さん(享年70)がスタジオジブリの新作アニメ映画「かぐや姫の物語」で声優を務めていたことが17日、分かった。
都内で行われた同作の中間報告会見で声のキャストが発表されたもので、地井さんはかぐや姫の育ての親となる翁(おきな)を演じている。2011年8月に収録された同作の公開は11月23日。亡くなってから1年5カ月を経ての遺作公開となる。
地井さんの意外な遺作が明らかになった。「かぐや姫の物語」は、宮崎駿監督(72)が引退を表明した後の最初のスタジオジブリ映画で、高畑勲監督にとっては14年ぶりの新作。製作が遅れていたこともあり、地井さんは11年8月にプレスコ(映像よりも先に声を収録する手法)を行っていた。
体調を崩した12年1月より以前の仕事だったため、関係者や地井さん自身もこれが遺作となるとはまったく予想していなかったという。
地井さんが声優を務めたのは09年のCG映画「きかんしゃ やえもん」に続き、2度目。収録時には「うまくいきませんでした。70歳近い(当時69歳)初心者だったわけで、困ったものです」と悔やんでいたという。
ただ、役に魂を込めるのは不慣れなアニメでも、通常の演技でも同じだったようだ。かぐや姫役の女優・朝倉あき(21)は「翁に泣いてすがられる場面では心をむき出しにされて、本読み(リハーサル)で泣き崩れてしまったくらい。演技にかける意気込みを肌で感じて、一瞬でもご一緒できてよかった」と最初で最後の共演を振り返った。
現場ではいつもニコニコしていたが、1度だけ高畑監督に「(かぐや姫が)地球を否定する映画なんですか」と詰め寄った事があった。プレスコが東日本大震災の5カ月後だったため、被災者を気づかっての発言だった。高畑監督に「まったく逆で、少女が大地にあこがれる映画です」と説明を受け納得したが、優しい心遣いは最後まで変わらなかった。
地井さんが亡くなってからの公開となるが、その思いはしっかりと作品に刻み込まれている。