阿久さん 藤圭子さんに幻作品書いてた
多くの昭和の名曲を世に送り出した作詞家・阿久悠さん(享年70)が、歌手・藤圭子さん(享年62)のために書き下ろした“幻の作品”が存在していたことが9日、分かった。タイトルは「演歌の星」。70年にスタートした藤さんが司会を務めた日本テレビ系の音楽番組「圭子の演歌の星」のテーマ曲として、阿久さんが作詞した。番組構成上、テーマ曲が使われなかったことから、そのままお蔵入りしていた。
阿久悠さんが、昭和の歌姫・藤さんのために書いた「演歌の星」は、70年10月にスタートした音楽番組「圭子の演歌の星」で藤さんが歌うテーマ曲として、当時、日本テレビの番組プロデューサーだった木村尚武氏(77)が発注していた。
最近、木村氏が資料整理をしていたところ、阿久さん直筆の作品が見つかった。木村氏によれば、阿久さんは当時、作詞家としては駆け出しで同番組に携わっていた。番組の台本を書きながら、番組内で歌われる曲の歌詞を写すなどして、作詞の勉強にも励む中で、作品を完成させたという。
番組の構成上、テーマ曲は使われることなく、作品はお蔵入りとなっていたが、藤さんが世を去った今年、作品が“発見”されたことで、木村氏は43年の時を経ての公表を決意。「音楽界に素晴らしい功績を残した2人の楽曲。このままではもったいない。何とかしたい」と話している。
今後の扱いは決まっていないが、ほかにも阿久さんが作詞した未発表の3作品も見つかったという。
作品は、藤さんの代表曲で当時大ヒットしていた「圭子の夢は夜ひらく」と同様、夜の世界に生きる女の怨念が込められた、藤さんの雰囲気にふさわしい詞となっている。
藤さんと阿久さんは「京都から博多まで」(72年)、「別れの旅」(72年)を大ヒットさせている。当時、藤さんを担当していた音楽関係者は「演歌の星」の存在を知り、「当時、出していれば、阿久さんと藤さんの三部作になっていたかもしれない」と惜しんでいた。