長山藍子 朗読劇で「心を伝えたい」

 女優・長山藍子(73)が来月、「柳橋物語~おせん、私は生きていく~」(9月3日、東京・三越劇場、同13日、新潟・りゅーとぴあ)で朗読劇に挑戦する。さまざまな顔を見せてきた、長いキャリアの中で、意外にもひとり語りの舞台は初めて。「つらいことを乗り越え、ひたむきに生きる姿を伝えていきたい。心を伝えたい」と意気込む。常に新しいことに挑み続ける胸の内を22日、都内で聞いた。

 「柳橋物語」は山本周五郎原作の小説で、江戸を舞台に、少女・おせんが、多くの苦難を乗り越えながら、愛と真実をまっとうする姿が描かれる。これまでもドラマや舞台になっている名作だ。

 「普通、舞台は、ひとりの人物の成長や変化を演じていきますが、この作品には十二、三人が出てきます。それをものまねや声色ではなく、朗読の範囲の中で、心を伝えていかなければなりません」

 これまでにも数人で行った朗読劇の経験はある。だが今回はひとり。挑戦するのは、伝えたい、という思いからだ。

 「人は生きていく間にいろんなことがあるけれど、乗り越えるための努力をします。今の私たちがいるのは、そんな、ひたむきに生きた人々がいたからです。おせんは江戸という時代に柔らかい感情を持って努力します。おせんの成長を見て、聞いて、山本周五郎の世界を楽しんでほしい。そして、舞台を見た方に、何かを持ち帰っていただければいいなと思います」と語る。

 押しも押されもせぬベテラン女優。作家・平岩弓枝氏、演出家・石井ふく子氏らとの“人との出会い”、そして多くの“役との出会い”が彼女を変えてきた。特に「渡る世間は鬼ばかり」で演じた弥生役は、今も街で役名で声をかけられるほど認知された。

 だが、長山は言う。「私はいつもチャレンジャー」。今なお新しい仕事に挑み、吸収し、表現として放出する意欲にあふれる。

 「映画や芝居…いいアートを見ると、現実を忘れていい時間を持つことができる。そんな時間、異空間を作ることができるのが、この仕事のすてきな、やってうれしいところなんです」。転機を聞いた記者に、「しょっちゅうですよ。初めてのひとり朗読劇も、すごいことだと思ってますよ」と語り、「作品を作っている時はつらいな、と思うこともありますが、辞めよう、と思ったことがないんです」と笑った。進化は、これからも止まらない‐。

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