小百合 健さんとの初共演“転機”に
10日に83歳でこの世を去った名優高倉健さんの訃報は18日、芸能界に大きな衝撃と悲しみをもたらした。映画「動乱」で共演した吉永小百合(69)や「幸福の黄色いハンカチ」で共演した武田鉄矢(65)をはじめ、世代を超えて多くの人々が哀悼の言葉を寄せた。
長きにわたり、ともに日本映画界をけん引してきた吉永が、感謝の言葉を天国へと贈った。
「お知らせに信じられない思いでおります。映画の世界に生きることの素晴らしさを教えていただいた方です。本当にありがとうございました。感謝の思いでいっぱいです」
健さんと初共演した80年公開の映画「動乱」が、吉永にとって女優としてのターニングポイントとなった。当時34歳。10代から年間15本近い映画にハイペースで出演し続け、映画への思いが希薄になりつつあった時期に、1年間かけて日本の四季を取り入れて撮影した。
北海道ロケで休憩時にも寒風吹きすさぶ中で立ち続け、役に集中する健さんの姿が映画への思いを再燃させたという。同作では健さんが二・二六事件の首謀者として処刑される主人公の将校を、吉永がその妻を演じている。健さんに刺激を受けた吉永は、処刑前のシーンでカットがかかっても涙が止まらぬほど役に没頭したという。
「動乱」出演以降は、“いい映画に参加したい”と、出演作はすべて自分で決めるように変えた。最新作「ふしぎな岬の物語」で初めてプロデューサーを兼ねたように、現在も続く映画への情熱は健さんとの共演が発端といっても過言ではない。
「中国への旅をご一緒して以来、一度もお目にかかっていませんでした」と、会ったのは86年に日中文化交流のイベントで万里の長城などを巡ったのが最後。30年近く接点はなかったが、恩人とのつらい別れとなった。