劇団文学座代表で、黒沢明監督の映画などで脇役として活躍した俳優の加藤武（かとう・たけし）さんが７月３１日夜、東京都内の病院で死去したことが１日、分かった。８６歳。東京都出身。３１日夕方にスポーツジムのサウナで倒れ、病院に搬送された。死因は不明。葬儀・告別式は親族で行い、後日、お別れの会を予定しているという。

　文学座によると、加藤さんは３１日夕方にスポーツジムのサウナで倒れ、病院に救急搬送され、その後、息をひきとった。同日は電話で仕事の連絡を取るなど元気な様子だったという。サウナは日課ではなく、ジムに通った際に入る程度だった。

　持病もなく舞台人として日々、体調管理に気をつけていた加藤さんは、９月２６日から岐阜県で幕を開ける主演舞台「すててこてこてこ」に意欲を燃やしていた。月末から始まる稽古に向け、ジムで調整していた矢先だった。代役は現時点で未定という。

　加藤さんは１９５２年に文学座入り。こわもての風貌と愛嬌（あいきょう）のある演技で、悪役や個性の強い役どころを務め、北村和夫さんと共に同座の中核俳優となった。

　黒沢監督の「悪い奴（やつ）ほどよく眠る」「乱」、今村昌平監督「豚と軍艦」など数多くの映画に出演。市川崑監督「犬神家の一族」「八つ墓村」「悪魔の手毬唄」など横溝正史原作の金田一耕助シリーズに警官役で出演し、「よーし、分かった」の決めぜりふで知られた。

　「仁義なき戦い」「釣りバカ日誌」といった映画の人気シリーズや、「風林火山」などのＮＨＫ大河ドラマでも、印象的な脇役を演じた。２０１４年に葛飾北斎を演じた主演舞台「夏の盛りの蝉のように」で第４９回紀伊國屋演劇賞などを受賞。

　７月１９日の東京・日本橋での一人語り公演「語りの世界」が観客の前での最後の舞台に。最後の仕事となった７月２２日収録のＴＢＳラジオの特番「永六輔の誰かとどこかで」は、８月９日に放送される。