「火垂るの墓」の野坂昭如さん逝く

 作家で元参院議員だった故・野坂昭如さん
 野坂昭如さんの次女、亀井亜未さん
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 「焼け跡闇市派」を自称し、小説「火垂るの墓」などで直木賞を受賞、作詞家やタレントとしても活躍した作家で元参院議員の野坂昭如(のさか・あきゆき)さんが9日午後10時37分頃、心不全のため東京都新宿区の東京医大病院で死去した。85歳。神奈川県出身。葬儀・告別式は19日午前11時から東京・青山葬儀所で。喪主は妻暘子(ようこ)さん。2003年に脳梗塞で倒れ、闘病を続けていた。

 関係者によると、野坂さんは9日午後9時すぎ、都内の自宅から病院へ搬送され、病院で死亡が確認された。暘子さんが119番した。10日、自宅前で取材に応じた次女で元宝塚歌劇団女優の亀井亜未さん(43)=顔写真=によれば、当日も意識ははっきりしていたという。

 亜未さんは、家での野坂さんを「おとなしく優しい人。恥ずかしがり屋で自分の作品についてはあまり話さず、『火垂るの墓』の映画も悲しくなるからと最期まで見られなかった」と語り、「大変、安らかで穏やかでございました」と涙ながらに最期を明かした。

 野坂さんは1945年、少年時代を過ごした神戸で空襲に遭い、養父が死亡。その後、疎開先の福井で義妹が栄養失調で亡くなった。50年代からコント作家、CMソング作詞家などで活躍。63年に「おもちゃのチャチャチャ」で日本レコード大賞童謡賞を受けた。

 同年、小説「エロ事師(ごとし)たち」で本格的に作家デビュー。68年、米軍による占領を題材にした「アメリカひじき」と、戦災の体験を基に書いた「火垂るの墓」で直木賞。「火垂る-」はアニメ映画(88年)も話題となった。

 「焼け跡闇市派」を自称し、社会批判を展開。ウイスキーのテレビCMで歌った「みんな悩んで大きくなった」は流行語に。歌手として「黒の舟唄」「マリリン・モンロー・ノー・リターン」「バージンブルース」などをヒットさせ、永六輔(82)、故小沢昭一さんとの「中年御三家」で74年に日本武道館公演も行うなど、芸能活動でも人気を集めた。

 73年、雑誌「面白半分」編集長として掲載した「四畳半襖(ふすま)の下張(したばり)」がわいせつ文書として摘発され、80年に最高裁で罰金刑が確定。83年、二院クラブから参院選に初当選した。同年、田中角栄元首相に対抗して衆院・旧新潟3区に立候補、金権政治を批判したが落選した。

 その後もテレビ朝日「朝まで生テレビ!」などで論客ぶりを発揮。「脳梗塞で倒れてから右手が利かず、口も曲がって(普通に)しゃべれなくなった」(関係者)が、暘子さんによる口述筆記の助けを借りて、最期まで精力的に戦争の悲惨さを訴え続けた。

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