安藤昇さん逝く 異色の映画スター

 愚連(ぐれん)隊「安藤組」組長として、解散後は異色の映画スターとして戦後史を彩り、歌手、作家、映画プロデューサーとしても活躍した安藤昇さんが16日午後、肺炎のため都内の病院で死去していたことが18日、わかった。89歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行われ、後日、お別れの会を開く予定。

 昭和を彩ったスーパースターがまた1人、旅立った。

 安藤さんは戦前、感化院や少年院に収監される荒れた少年時代を送り、戦時中は特攻隊の伏龍隊に所属。終戦後、安藤組を結成し、渋谷などに縄張りを築いた。法政大に在学していた安藤さん、生涯が何度も映画化された故花形敬さんら幹部はみな大卒、大学中退で「インテリやくざ」と称された。後に作家として成功する安部譲二氏(78)も安藤組の一員だった。

 1958年、横井英樹・東洋郵船社長襲撃事件を起こし、34日間逃亡。服役後の64年に安藤組の解散式を行い翌65年、自伝的な映画「血と掟」で俳優としてデビューした。

 本物のやくざがやくざを演じた「血と掟」は大ヒット。組長時代に負った左ほおの刀傷は代名詞となり、やくざ映画のスーパースターとして君臨した。故鶴田浩二さん、故高倉健さん、故菅原文太さんらとの共演も多い。

 主な主演作に巨匠・加藤泰監督と名コンビを組んだ「男の顔は履歴書」や「懲役十八年」をはじめ、「実録 私設銀座警察」、横井事件後の逃亡生活を描いた実録「安藤昇のわが逃亡とSEXの記録」など。79年の「総長の首」を最後に一線を退き、2004年の「渋谷物語」が最後の映画出演となった。

 歌手や映画プロデューサー、作家としても活躍し、93年にはデイリースポーツに「安藤昇の女まん遊」を連載。今年も新聞連載を持っていた。自伝「やくざと抗争」など多くの著書がある。

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