長野県松本市で指揮した公演のアルバムが世界最高峰の音楽の祭典「第５８回グラミー賞」の最優秀オペラ録音部門を受賞した指揮者の小澤征爾さん（８０）が１７日、京都市内で会見し「仲間と一緒にいただいた賞だと思う」と喜びを表した。８度目のノミネートで初受賞。食道がんの手術を経てつかんだ賞に、関係者への感謝の言葉があふれた。

　黒のスーツ、白いタキシードシャツで姿をみせた小澤さんは、笑顔で頭を下げ合掌した。この日は、ロームシアター京都での喜歌劇公演「こうもり」（１８、２０日）の初日を翌日に控えた休養日。公演の舞台上でマイクを握ると、「みんなと一緒に賞をもらってうれしい。仲間と分かち合いたい」と目尻を下げた。

　受賞作は２０１３年８月に松本市で開かれた音楽祭「サイトウ・キネン・フェスティバル松本（現セイジ・オザワ松本フェスティバル）」で指揮した歌劇「こどもと魔法」収録のアルバム。１０年に食道がんの手術を受け、１２年は３月から１年間休養。闘病を乗り越えた作品だった。

　当時を振り返ると、感慨深い表情を浮かべた。「今もオタオタしているが、その頃はもっとオタオタしていた。いかにオーケストラ、歌い手が素晴らしかったかということ。みんなに助けられた。みんなで作ったのがこういう形になったのがすごくいい」と感謝の言葉を続けた。

　６９年以降、８度目のノミネートで初受賞となったが、「ノミネートされたことは覚えていない」。発表前日も普段どおりだった様子で「受賞時用のコメントを用意してと頼まれたのに、忘れて寝るところだった」と笑わせた。

　今後の目標について聞かれると、きりっと前を見据えた。「体のことで迷惑をかけた。だから迷惑をかけないように、子どもたちのための音楽塾などをやっていきたい」。若手育成に励む決意を示した。勲章を手にした８０歳の小澤さんが、歩みを止めることはない。