三島賞 超不機嫌…異例の受賞会見
第29回三島由紀夫賞(新潮文芸振興会主催)の選考会が16日開かれ、仏文学者で元東京大学長の蓮実重彦さん(80)の「伯爵夫人」に決まった。都内で会見した蓮実さんは「はた迷惑な話」と不愉快そうに語り、会見は異例の重苦しい雰囲気に包まれた。
蓮実さんは文芸評論家、映画評論家として名高い。受賞作は太平洋戦争前夜の東京を舞台に、映画好きの青年と「伯爵夫人」と呼ばれる年上の女性の関係を官能的に描いた。
司会から「心境は」と問われると「私の中に心境という言葉はないので、お答えしません」と一蹴。記者の質問も「おっしゃる意図が分かりません」「ばかな質問をやめていただけますか」と次々に却下し、会見場は凍り付いた。蓮実さんは「日本の文化にとって非常に嘆かわしい。もっと若い方を選ぶべき。迷惑だと思っています」と言い切った。
受賞作は評論「『ボヴァリー夫人』論」を書いた影響が大きいと明かしたが「その100分の1の労力も費やしておりません。私のように散文のフィクションの研究をしている者は、あの程度のものはいつでも書けます」と豪語した。