和歌山市の建設会社で従業員４人が撃たれ死傷した事件で、溝畑泰秀容疑者（４５）＝殺人容疑などで指名手配＝が３１日未明、拳銃２丁を所持し、同社近くの住宅地に立てこもった。約１７時間半後の同日午後６時４０分ごろ、和歌山県警が投降の説得をする中、自ら拳銃で腹部付近を１発撃った。県警は銃刀法違反容疑で現行犯逮捕したが、溝畑容疑者は約２時間後に搬送先の病院で死亡した。

　発砲音が鳴り、現場が騒然となったのは午後６時４０分ごろ。盾を構えた捜査員が数メートルの距離で説得する中、溝畑容疑者が右手に持った拳銃を自分に向けて腹部を撃ち、あおむけに倒れた。

　捜査員がすぐに拳銃２丁を押収。間もなく到着した救急車に運ばれた溝畑容疑者はけいれんし、問い掛けには応じない。目撃した男性は「容疑者は車内で足をばたつかせて、脇腹を押さえていたように見えた」と話した。溝畑容疑者は、県警の説得に「絶対に投降しない。命を絶つ覚悟を決めている」と繰り返していたという。

　３０日夜に発砲事件の現場である和大興業の周辺で県警に見つかるも、発砲して逃走した容疑者。３１日午前１時すぎ、アパートで再び発見されてからは両手の拳銃を常時離さず、寝た様子はなかった。

　捜査員に「２００万円を母親に渡してほしい」「母親を漫画にするな。ばかにするな」と家族に言及。たばこを吸ったり、自らに銃口を向けるそぶりを見せたりもあった。

　「中華丼とビールを」の要求は捜査員に拒まれた。午後３時前、洗濯機や机を並べて築いたバリケードを崩した溝畑容疑者は、１階のトイレに。付近で待機していたヘルメット姿の大阪府警特殊部隊が慌てて前進し、緊張が走った。

　突入はせず、ドアを開けた状態でトイレを終えた後、１階に座り込んだ。午後５時半すぎには１０～１５分ほどアパートと路上の間を行ったり来たりするも、投降はせず、膠着（こうちゃく）状態が続いていた。

　県警がアパート付近で押収した黒色の手提げかばんからは注射器と小分け用の袋が見つかった。県警は薬物の所持、使用の痕跡について調べる。