「忠臣蔵」を東京五輪年に再び大河ドラマで…赤穂市など誘致合戦に“討ち入り”
兵庫県赤穂市など、赤穂浪士事件にゆかりのある全国30市町村が、東京五輪イヤーの2020年にNHK大河ドラマで「忠臣蔵」を題材にした作品の放送実現を目指し、誘致活動に乗り出した。忠臣蔵作品が初めて大河ドラマとなったのは前回東京五輪が開催された1964年の「赤穂浪士」で、最高視聴率53・0%は現在も破られていない。昭和期に比べると作品化される頻度が減った時代劇の雄。世界注目の五輪イヤーに縁ある国民的作品が再び放送されることをNHKに直談判し、激戦の大河誘致に“討ち入り”をかけた。
忠臣蔵は、大河ドラマでは長谷川一夫さん主演の64年「赤穂浪士」をはじめ4作が放送された人気題材だったが、99年の中村勘三郎さん(当時・勘九郎)主演「元禄繚乱」を最後に、今世紀に入ってからは作品化されていない。
21年ぶりとなる忠臣蔵の大河ドラマ実現を目指す誘致活動。赤穂市産業観光課によると、すでにポスターも完成し、忠臣蔵ゆかりの全国自治体がタッグを組み、今秋から行われる各地のイベントなどで、全国規模のPR活動や署名活動を展開する予定だという。
先だって今年8月5日には、忠臣蔵に縁がある全国30自治体が集まって毎年開催している会議「忠臣蔵サミット」を東京都港区(※泉岳寺には赤穂義士の墓所)で開催。これに合わせて東京・渋谷のNHKに乗り込み、要望書を提出することに。
結局、NHK側の会場設定の事情で、NHKのドラマ番組部長とチーフプロデューサーが同サミットに参加する形式に変更となったが、要望書は手渡された。
赤穂市の担当者によると、NHK側からは同局が今秋に放送する土曜時代劇「忠臣蔵の恋~四十八人目の忠臣~」も盛り上げてほしいとの協力要請もあったそうで「リップサービスもあったと思いますが、今年のドラマを盛り上げることでも『お互いにつながりを作っていければ』との返事をいただきました」と明かした。
赤穂市が忠臣蔵の作品誘致を行うのは今回が初めてという。
大河以外でも、昭和時代から映画や年末ドラマなどで数々の名優が大石内蔵助を演じてきた忠臣蔵。ただ近年は作品化される頻度が減っている。
赤穂市の担当者は「年配の方々には強い人気がありますが、若い世代にはなじみが薄くなっているのも事実。忠臣蔵と赤穂が結びつかなくなってきていたり、危機感があります。市民の皆さんの間にも『行動を起こさないといけない』との声もありました」と事情を説明する。
こうした背景から、昨年の「忠臣蔵サミット」の席で大河ドラマ誘致の案が浮上。これを受けて準備が進み、世界の注目が集まる2020年五輪イヤーを「若者はもちろん、外国人の方にも忠臣蔵を知っていただくチャンス」と位置づけ、誘致活動を本格化させることに。
大河ドラマの誘致活動は、各地の自治体がゆかりの武将などをPR合戦していることで知られ、赤穂市側も「特に2020年は競争が激しいでしょう。ライバルは2ケタはいらっしゃるはず」と話す。
ただ赤穂・浅野家発祥の地である茨城県笠間市など、赤穂市とタッグを組む自治体も相当に力が入っているといい、「忠臣蔵」の誘致参戦で、五輪イヤーの大河ドラマ選考が注目を集めそうだ。(デイリースポーツ・北口貢)