ポーランド映画の巨匠A・ワイダ監督死去 玉三郎主演「ナスターシャ」など手掛ける
ポーランドのメディアによると、「灰とダイヤモンド」や「大理石の男」など激動のポーランド現代史を描いた作品で知られる同国の映画監督アンジェイ・ワイダ氏が9日、死去した。90歳。入院中だった。歌舞伎俳優・坂東玉三郎(66)の主演で舞台や映画を手掛けるなど日本とも縁が深い巨匠で、2013年に「ワレサ 連帯の男」を発表するなど80歳を過ぎても旺盛な創作意欲を示していた。
1926年生まれ。国立映画大学を卒業し映画界入り。50年代の「世代」「地下水道」「灰とダイヤモンド」の「抵抗3部作」は、反ナチス抵抗運動を題材としながら、共産主義体制への抵抗を暗示し、国際的に高い評価を受けた。
1960年代から80年代初頭にかけて精力的に作品を撮り続け、「白樺(しらかば)の林」でモスクワ国際映画祭監督賞、「約束の土地」で同映画祭金賞を受賞。フランス革命の英雄を描いた「ダントン」では仏セザール賞の監督賞を受賞した。
81年、共産主義体制下で自由化を求めた自主管理労組「連帯」を積極的に支持し「鉄の男」で同労組のレフ・ワレサ議長(当時)に自分自身を演じさせて、同年のカンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)を受賞した。2013年には「ワレサ 連帯の男」で同氏の半生を描いている。
00年に米アカデミー賞名誉賞を授与された。07年の「カティンの森」では、自身の父を含むポーランド軍将校ら2万人以上がソ連に虐殺された事件を取り上げた。
また、舞台やテレビでも多くの作品を演出している。
葛飾北斎や黒澤明監督の作品に感銘を受けるなど、日本文化への関心も深かった。1987年に受賞した京都賞の賞金を基に94年、ポーランド南部の古都クラクフに多数の浮世絵などを収めた「日本美術・技術センター」を創設している。
89年1月には玉三郎を主役に据え、ドストエフスキーの小説「白痴」を自らの手で劇化した「ナスターシャ」を東京・森下のベニサン・ピットで演出。94年には玉三郎と永島敏行(59)の主演で映画化している。
東日本大震災後には「苦難の中でも楽観を失わない。それが日本人だ」と励ます手紙を共同通信に寄稿した。