フジテレビ系「小川宏ショー」の司会を１７年間にわたって務め、テレビの朝の顔として親しまれたアナウンサーの小川宏（おがわ・ひろし）さんが１１月２９日午前１１時、多臓器不全のため都内の病院で死去していたことが５日、わかった。９０歳。東京都出身。葬儀・告別式は近親者で行った。喪主は妻富佐子（ふさこ）さん。「小川宏ショー」で苦楽を共にしたフリーアナウンサーの露木茂（７５）、女優の藤田弓子（７１）、新井晴み（６３）がこの日、デイリースポーツに小川さんの思い出を語った。

　小川さんは１０月末の「小川宏ショー」の同窓会を欠席した。同番組で長く司会、リポーターを務めた露木によれば、１０月半ばに肺炎で入院。容体は安定していたという。

　昨年、小川さん一家と食事した藤田は「『またね』ってお別れしました。ずっと『またね』が続くような気がして…」と、死が信じられない様子。今年初めに電話で話した露木には、いつもと変わらない口調ながら「足の具合が悪いのであまり外に出なくなった」と説明したという。

　小川さんは１９４９年、ＮＨＫ入局。クイズ番組「ジェスチャー」の司会を１０年間担当し、人気を集めた。退局後、６５年５月１日にスタートした朝のワイドショー「小川宏ショー」の司会者に。「春の小川」と称された穏やかな人柄と流ちょうなトークが売りもので、「初恋談義」などのコーナーが高視聴率を獲得。番組は８２年３月３１日まで、４４５１回放送された。

　８０～８１年に司会を務めた新井は、小川さんが「ゲストの方の応接室を作らせたそうです」と証言。迎えに行くハイヤーに「（早く着くと）ゲストの方が焦ってしまうから」と約束の時間ちょうどに着くよう指示するなど、ゲストへの気配りは徹底していた。

　７３～７５年に司会を務めた藤田は「とちりの弓子」とあだ名されるほどミスが多かったが「全部フォローしてくださった」という。新井に「司会者はしゃべっちゃダメだ」と教え、色紙にはよく「画面には映らぬ人の汗の数」と書くなど、後輩やスタッフへの指導や気配りも怠らなかった。

　「司会のプロとして姿で見せてくださった」（藤田）小川さんを周囲も慕った。１０月の同窓会には、番組が終了して３６年たつにもかかわらず１００人以上が集まったという。露木は「ゲストの気持ちを和ませながら本音を引き出していく話術に毎日勉強させていただいた。アナウンサーとは心構えで伝えていくものだと教えていただいた」と感謝した。

　プロダクションの経理を任せた身内の裏切りにあって貯金を全て失い、億単位の借金まで残される不運にも見舞われた。９１年にうつを発症、９２年３月には鉄道自殺まで試みたが、入院して克服。壮絶な経験を著書「病気は人生の挫折ではない」にまとめ、各地で講演活動を行った。

　「大人の男の人が尊敬できる大人の男」（藤田）が、旅立った。