根津甚八さん 盟友・石井隆監督映画「GONINサーガ」に1作限り復帰
2010年に俳優を引退した根津甚八(ねづ・じんぱち、本名透=とおる)さんが29日、亡くなった。69歳。1978年、大河ドラマ「黄金の日日」で脚光を浴び、82年の映画「さらば愛しき大地」で日本アカデミー賞主演男優賞を受賞。ほかに「吉原炎上」などでも存在感が光った。黒澤明監督の映画「影武者」や「乱」などにも出演した。
寡黙でダンディーな人柄とは対照的な本番での熱量-。ゆかりの人々が追悼コメントを寄せ、俳優・根津甚八のすごみを浮き彫りにした。
遺作など8作品でタッグを組んだ石井隆監督は「色悪というか、何をやっても格好がいい。カチンコが鳴ると捨て身で演じるから腰を痛めたり、いつも満身創痍(そうい)でした」と肉体を顧みない熱演を振り返る。
女優の名取裕子(59)は自身の主演映画「吉原炎上」で共演。現場では「いつも寡黙で静かなまなざしを持った素敵な方」だったが、撮影が始まると一変したといい、「役に取り組む姿勢に緊張感と凄味が宿り、ご一緒した時は身の引き締まる思いでした」と振り返った。
俳優の椎名桔平(52)は93年の共演以来、弟のようにかわいがられ、薫陶を受けた1人。役者について「世阿弥が著しているように、現実と虚構の狭間をゆらゆらと生きるものだよ」「生き様が芝居に繋がるんだよ」といった金言を授けられたと明かし、「宝物として大事にしまってあります」としのんだ。