根津甚八さん逝く 波乱万丈の二枚目俳優 大河「黄金の日日」黒澤映画など出演

 亡くなった根津甚八さん
 デイリースポーツに来社した根津甚八さん=1976年
 根津甚八さん
3枚

 大河ドラマ「黄金の日日」や映画「影武者」などに出演し、俳優として活躍した根津甚八(ねづ・じんぱち、本名透=とおる)さんが29日昼、肺炎のため、東京都内の病院で死去した。69歳。山梨県出身。01年に右眼下直筋肥大を発症するなど体調を崩し、近年は入退院を繰り返していた。2010年に俳優を引退。盟友・石井隆監督(70)のために1作限りで復帰した15年公開の映画「GONIN サーガ」が遺作となった。故人の遺志により、葬儀は近親者のみの密葬を執り行う。

 壮絶な人生を歩んだ実力派が旅立った。所属事務所によると、肺炎のため、かねて病気療養していた都内の病院で昼ごろに亡くなったという。

 96年に長男が誕生するなど順風満帆に思われた根津さんの家庭生活だったが、01年に右眼下直筋肥大という病気を患った。手術を受けたことで顔のバランスが崩れてしまい、耳の軟骨を注入するなど何度も目の周辺にメスを入れた。表情の演技に支障をきたし、理想とする芝居とのギャップに苦しんだ。

 04年には自動車を運転中に自宅近くで事故を起こし、被害者が死亡。活動はほぼ休止状態となり、05年に持病のヘルニアを手術してからは、つえでの生活を余儀なくされた。15歳年下の妻・仁香さんによると、心身の不調からうつ病にも悩まされていたという。

 自身の目指す演技ができなくなったことで、2010年に俳優引退を発表。近年はマヒが残ることから車いすでの生活を送っていた。引退後は公の場に姿を見せていなかったが、事務所の後輩でもある俳優の東出昌大(28)が主演した映画「GONIN サーガ」で11年ぶりに1作限りの復帰を果たした。

 メーンキャストだった「GONIN」(95年公開)の19年後を描いた続編で、映画50作目の節目。自身最多8作品でタッグを組む石井監督からの熱烈なオファーを受け、最後の演技を決意。2014年6月の撮影時には、植物状態から意識を取り戻した人物を、這(は)いながら演じるなど鬼気迫る姿を披露した。往年の面影よりも体重が増え、髪は白くなっていたが、存在感は健在だった。役者魂を振り絞り「未練を捨てて、終止符を打てた」と自身が語る遺作となった。

 私生活でも3度の結婚を経験。公私ともに浮き沈みの大きい生涯を送り、多くの人に愛された二枚目だった。

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