“演技オタク”永山絢斗が進む役者道とは…ワンシーンで体力全部使い切るくらいで
4日から女優・芳根京子(19)主演のNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」(月~土、前8・00)の後半戦がスタートする。ヒロインの夫役を好演しているのが俳優・永山絢斗(27)。一時は戦争で収容所暮らしを余儀なくされ、家族のもとに帰ってきてからは浦島太郎状態で戸惑う様を繊細に演じて物語に厚みを与えた。視聴者の心をつかむイケメンの素顔に迫ると“演技オタク”ともいえるストイックさが見えてきた。国内外の名優たちから力を借りて、役者道を突き進んでいる。
「べっぴんさん」はNHK大阪の制作。永山は西の都にマンションを借りて24時間、修行僧のように演技の世界に没頭している。撮影が終わると自室で映画を1作、休みの日にはDVD3本を見た後に映画館へ、なんて日もあるという。根っからの芝居好きなのだ。
ドラマや映画がクランクインすると「近いテーマの作品を見る」のが恒例という。今作は、アパレルメーカー「ファミリア」の創業者をモデルに、戦後の日本で力強く子供服作りに奮闘するヒロインの一代記。その夫・紀夫を演じるだけに、DVD鑑賞も戦後を舞台にした白黒時代の名作が主となった。
目を奪われたのは、昭和の大スター・勝新太郎さんの「悪名」シリーズ。「あんなにオーバーに動いているのに、ちっともうるさくない。すごく誠実に芝居をされていて、目を引く。人物(役者)にほれる。自分も紀夫って役を見て、視聴者の方が(テレビの前で)つっこんでくれるような役でいられたらいいなと思います」。
小津安二郎監督の作品に欠かせない笠智衆さんが体現した男性像を見て「ちょこちょこいろんなエッセンスをもらいながら」と芝居に生かし、シニカルな喜劇作で知られる川島雄三監督の作品にも影響を受けたという。名演を吸収しつつ、撮影現場では「ホン(台本)を読みながら今でも手探り」と勉強の日々だ。
ヒロインと考え方に相違が生じ、紀夫が苦しむ時期には自身の気持ちも落ち込んだ。役との格闘。そんなときは脳裏に海の向こうの名優たちを浮かべた。
「繊細な演技に憧れるんですよね。僕が好きなだけなんですが、ショーン・ペンとかティム・ロスとかすごいじゃないですか。それを意識したところはあります。『オレはジェームス・ディーンみたいになる』『オレはショーン・ペンと闘ってるんだ』って。足元にも…って感じなんですけど」。レジェンドたちとの“闘い”が視聴者たちを引きつけた。
ヒロインと年を重ね、最終的には60代になる設定。父親役も初めてで「今(撮影中の役が)40代を超えて、娘も大きくなって反抗期。自分の感覚にないところにきているのでボーナスタイムだと思って楽しんでます」と笑う。現場では「芳根ちゃんの笑顔に癒やされてます」と“妻”の力も大きいという。
スケジュールは過密な上に長丁場。詩人・相田みつをさんの言葉「やれなかった やらなかった どっちかな」を大事にしている。
「すごいスケジュールなんです。でも、その中で体力を温存しているようじゃダメだな、と思ってやっています。ワンシーンで全部使い切るくらいでいたい。家に帰って『まだできるな』って感じにはしたくないですね」。燃え尽きて帰ると、缶ビールの一口目が違う。
プライベートでは女優の満島ひかり(31)と交際中。「遠距離ですからね」と苦笑いするが、理想の家族像を聞くと率直だった。「子供は見てみたいです。ずっと1人でいるのも嫌ですしね」。とはいえ今は、年下の「べっぴん妻」と4月の最終回まで走り続ける。