伊藤銀次 45年間の終着点 恩師・故大滝詠一さんに捧げる集大成
今年、デビュー45周年を迎えるシンガー・ソングライターの伊藤銀次(66)が、45周年プロジェクトの第1弾として昨年11月30日、バンド「ココナツ・バンク」のアルバム「THE COMPLETE COCONUT BANK」を発表した。「笑っていいとも!」のテーマ曲「ウキウキWatching」をはじめとする多くのヒット曲を生み出したプロデューサー、作曲家、編曲家でもある伊藤が、45周年への意気込みや恩師である故大滝詠一さんへの思いなどをデイリースポーツに明かした。
「ウキウキ-」を作曲、「オレたちひょうきん族」のエンディング曲「DOWN TOWN」を作詞し、沢田研二、アン・ルイス、ウルフルズらのプロデューサー、編曲家として大ヒット曲を連発した伊藤が、72年にデビューした時のバンド「ごまのはえ」改めココナツ・バンクのアルバムで記念プロジェクトを始動させた。
レーベルは45年前と同じキング系列のベルウッド。ココナツ-は当時、13年末に急逝したポップスの巨人、大滝さんのプロデュースでアルバムを出すはずだったが解散し、03年に再編してミニアルバムを出している。
伊藤は「大滝さんが亡くなられたこともあって、ココナツ・バンクの夢みたいなものを整理しておきたいなと思った」と説明。03年のアルバムに、70年代当時に書いた曲や新作も加えた完全盤だ。
「おはよう眠り猫君」は当時「大滝さんも面白がってくれて、アレンジも考えてくれた」曲で、「日射病」は大滝さんの名曲「あつさのせい」のアンサーソング。「大滝さんとは音楽だけじゃなく、同じ面白さの感覚を持っていた。変てこな作品を作ったりするのは僕と大滝さんとの間では普通のことですけど、そんなことをできるのは他にいない」という、2人に共通するユーモアがアルバムにはあふれている。
また、唱法も「僕はやっぱり大滝さんの歌が好き。唇やあごをうまく使って英語のように発音しながら日本語で歌った人だった。マネはできないけど少しでも自分のスタイルに取り込んでいきたい」と、大滝さんのそれを意識したという。
今後はプロジェクトの頂点として「久々のソロアルバムを出そう」と宣言。きっかけはやはり大滝さんの死で、その後も以前ギタリストを務めていたりりィさんら親しいミュージシャンの訃報が相次ぎ「50周年には出そうと思っていたけど。僕は今、元気だけど、50周年の時にどういう状態になるのか予想はできない」と決意した。
「歌という原点に戻って初めてアルバムを作ってみたい。四十何年かやってきた終着点っていうかね」-ソロアルバムでは、音楽人生の集大成を聴かせるつもりでいるようだ。