冨田真由さん刺傷事件初公判 犯行説明中に男性裁判員倒れる

 東京都小金井市で昨年5月、音楽活動をしていた大学生の冨田真由さん(21)が刺されて一時重体となった事件で、殺人未遂と銃刀法違反の罪に問われたファンで無職岩埼友宏被告(28)は20日、東京地裁立川支部(阿部浩巳裁判長)の裁判員裁判初公判で起訴内容を認めた。検察が、岩埼被告が「死ね死ね死ね」と切りつけたことを明かしたり、冨田さんの傷の説明中に男性裁判員が倒れたりするなど、犯行の残忍さが印象付けられた。

 検察側が冨田さんの傷の様子を詳しく説明中、男性裁判員の1人が突然うなり声を上げて倒れ込み、いすから崩れ落ちた。表情を変えていなかった被告も目を見開き、驚いた様子。廷内は騒然となり、裁判長が休廷を宣告した。地裁立川支部は「被害者の負傷状況を説明する資料を見ていて体調を崩したとみられる」としている。

 冨田さんの弁護士によると、冨田さんはついたてに囲まれた検察側の席で傍聴した。

 冨田さんは供述調書で「顔に大きな傷がある。もう女優としては無理だが、犯人に歌の仕事まで奪われたくない」と訴え、「死んでほしい。それが無理なら一生刑務所に入っていてほしい」と、厳しい処罰感情に言及。

 調書によると、顔や腕に多数の傷痕があるほか、神経の損傷で口にまひが残り、食事や会話にも支障がある。近所を歩くことすら怖く、事件前と全く違う生活を送っている。証人尋問では、冨田さんを心的外傷後ストレス障害(PTSD)と診断した医師が「事件と関係する行き先のバスを見ることも怖がる」と病状を説明した。

 検察側の冒頭陳述によると、冨田さんに一方的に好意を持った被告は、プレゼントを送り返されて怒りや屈辱感を募らせた。折り畳み式ナイフを購入し、冨田さんに話し掛けたが相手にされず、背後から襲撃。「死ね死ね死ね」と言いながら切りつけた。検察側は「執ようで極めて残忍」と主張した。

 弁護側は、駅で被害者を見つけて話し掛けたが無視され、衝動的に刺したと説明。119番し、救急隊員に「助けて」と頼んでおり、「計画性はなかった」と訴えた。

 起訴状などによると、被告は昨年5月21日午後5時5分頃、小金井市本町で、冨田さんの首や胸をナイフで多数回刺して殺害しようとしたとされる。

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