渡瀬恒彦さん“役者魂”最後まで 13日打ち合わせ翌日に体調急変
映画「仁義なき戦い」シリーズや「南極物語」、ドラマ「十津川警部」シリーズ、「おみやさん」などに出演した俳優の渡瀬恒彦(わたせ・つねひこ、本名同じ)さんが14日午後11時18分、多臓器不全のため都内の病院で死去した。72歳。主役も脇役も自在にこなす演技力で、兄の俳優・渡哲也(75)にはない魅力を発揮し人気を博した。葬儀・告別式などは親族のみで行う。喪主は妻い保(いほ)さんが務める。
死去が明らかになったこの日、渡瀬さんの自宅では妻のい保さんや家族が葬儀の準備などを行っていた。家族もある程度覚悟していたと見られ、湿っぽい空気ではなかった。い保さんは、お見舞いなどを断っていたことを謝罪していた。
対面した関係者によれば、渡瀬さんは眠っているようなおだやかな顔だったという。枕元には家族で撮った数枚の写真を小さなアルバムにして置いてあった。
渡瀬さんは4月からスタートするテレビ朝日系ドラマ「警視庁捜査一課9係 season12」(水曜、後9・00)に出演する予定だった。しかし、2月中旬に息苦しさを感じ病院に寄ったところ、肺気胸と診断され入院。3月13日に見舞った関係者は「元気そうで、番組(9係)の打ち合わせをしていた。(本人も)復帰するつもりでいた。痩せた様子などなかった」と話したが、14日に菌が血液を巡り全身に蔓延したことから容体が急変。奥さんや息子ら家族3人にみとられ息を引き取った。
近年は病との闘いを続けていた。2015年秋に胆のうがんが発覚。その後は治療を行いながら「-9係」に出演するなど、仕事を継続していた。2夜連続ドラマ「そして誰もいなくなった」(25・26日、後9・00)の収録もすでに終えているが、今月2日に都内で行われた制作発表は欠席していた。
胆のうがん発覚後は、知人らに会うのも控えていた。91年、兄の渡に直腸がんが発覚して以降は、たばこを辞め、健康に気を使うようになった。若いころは豪快な飲みっぷりだったが、酒量もセーブしていたという。
渡瀬さんは兵庫県出身。早大を除籍になった後に広告代理店勤務を経て、東映に入社。「仁義なき戦い」など実録映画で活躍した。その後は演技の幅を広げ、「セーラー服と機関銃」、「南極物語」など数々の話題作に出演。テレビドラマでも存在感を発揮。「十津川-」「おみやさん」「-9係」はそれぞれ長寿の人気シリーズに。硬軟自在の演技は幅広い世代に愛された。