渡瀬恒彦さん死去 兄・渡哲也、余命宣告受けていたと明かす
俳優の渡瀬恒彦(わたせ・つねひこ、本名同じ)さんが14日午後11時18分、多臓器不全のため都内の病院で死去した。72歳。実兄の俳優・渡哲也(75)は16日、マスコミ各社に直筆ファクスでコメントを発表。渡瀬さんが余命宣告を受けていたことを明かし「この喪失感は何とも言葉になりません」と悲痛な思いをつづった。
幼い頃から手を取り合ってきた弟の死に、渡はつらい思いを隠さなかった。渡瀬さんは2015年秋に胆のうがんを公表したが、渡は「当初よりステージ4、余命1年の告知を受けておりました」と明かした。
渡は14日に渡瀬さんが亡くなってから連絡を受け、渡瀬さんの自宅で対面したという。余命を聞かされていたとはいえ、やはりショックは大きく「今日の日が来る覚悟はしておりましたものの、弟を失いましたこの喪失感は何とも言葉になりません」と胸の痛みを打ち明けた。この日は自宅に滞在しており、関係者らが慌ただしく出入りしたが、報道陣の前に姿を見せることはなかった。
2人は兵庫県淡路島出身。渡は青山学院大学、渡瀬さんは早稲田大学にそれぞれ進学し、空手部に在籍した。渡は大学卒業後に日活に入社。渡瀬さんは早大除籍後、会社員から俳優に転身した。
同じ仕事を選びながら、照れや遠慮があり、共演は生涯で3度だけだった。71年のNHKのドラマ「あまくちからくち」、11年のTBS系「帰郷」では兄弟役。13年のTBS系「西村京太郎サスペンス 十津川警部シリーズ50作記念作品『消えたタンカー』」では犯人役の渡を渡瀬さんが逮捕した。
40年ぶりの共演となった「帰郷」の会見では渡が「わたしをはるかに超えた俳優になった」と仕事の上では一目置いていたことを告白。これに渡瀬さんが「兄貴程度しかできなかったらとっくに消えてます」と返すなど、息の合ったところを見せた。
また、95年の阪神・淡路大震災の際には渡を筆頭に石原軍団が芦屋市内で炊き出しを行い、渡瀬さんも駆けつけた。普段は距離があるようにも感じられる2人だったが、地元のピンチにはきずなの強さを見せた。
渡は同じ道を歩んでいた弟との別れに「幼少期より今日に到るまでの二人の生い立や同じ俳優として過した日々が思い返され、その情景が断ち切れず辛さが募るばかりです」とさみしさ、無念さを包み隠さず吐露した。