「凶悪」の白石和彌監督 コンプライアンスどこ吹く風「自主規制しない」
俳優・役所広司(61)が主演する映画「孤狼の血」(2018年春公開予定)の製作発表会見が3日、都内で行われ、白石和彌監督(42)がコンプライアンス(法令遵守)を気にせずに撮影することを宣言した。
映画は作家・柚月裕子氏(48)の同名ベストセラーが原作。昭和63年、暴力団対策法(暴対法)成立直前の広島県呉市を舞台に暴力団の抗争と警察の強引な捜査を描く。役所は暴力団との癒着がうわさされる刑事・大上章吾、松坂桃李(28)が大上とコンビを組み、法と正義を守ろうとする刑事・日岡秀一を演じる。
最近はテレビはもちろん、映画の世界でも暴力団を正面から描くのは避けられるようになってきている。
白石監督は「かつて日本で作られてきた世界がなかなか描かれなくなってきている」と、業界全体が萎縮していることを危惧。「コンプライアンスを気にしたり、自主規制したりしないでやりたいと思います」と断言した。映画「凶悪」(13年)では冷徹な殺人犯を、「日本で一番悪い奴ら」(16年)では組織の力の中で悪に手を染める警察官を描いてきただけに、“いい子”になるつもりは毛頭ないようだった。
この日はクラブのママ・高木里佳子役の真木よう子(34)、暴力団・五十子会組長の五十子正平役の石橋蓮司(75)、五十子会と対立する尾谷組の若頭・一ノ瀬守孝役の江口洋介(49)も出席。柚月氏は「考え得る最高の俳優。想像していた以上です」と絶賛した。
女性ながら「仁義なき戦い」シリーズの大ファンだという柚月氏は「『仁義なき戦い』なくしてこの作品はあり得なかった」と熱い思いを吐露。「仁義-」の東映が製作に携わり、アウトローを描けば右に出る者はいない白石監督がメガホンを取ることに大きな期待を寄せていた。