加藤一二三九段が引退確定 63年の棋士生活に幕
現役最高齢棋士の加藤一二三九段(77)が20日、東京・将棋会館で行われた、第30期竜王戦6組昇級者決定戦で高野智史四段(23)に98手で敗れ、最後の対局を終えた。
加藤九段は終局直前、約20分間離席し、戻ると盤前に座るより先に押し入れからカバンを取り出し、記録係と観戦記者に「今日は感想戦はなし」と通告した。それから1手着手し、相手の高野四段が次の手を指すと、すぐに「負けました」と投了。そのままカバンを持って対局室を出ると、関係者の静止に応じず、待たせていたタクシーで帰路についた。
あっという間の帰宅劇に、50人を超える報道陣もぼう然。日本将棋連盟の常務理事である森下卓九段(50)と鈴木大介九段(42)が経緯説明と謝罪の緊急会見を行い、対局相手の高野四段も列席するという騒動となった。
森下九段は「加藤先生を止めるだけの力は私にはなかった」と頭を下げつつ、観戦記者がいる対局での感想戦放棄は「異例」とした。高野四段は「最後の対局の相手となれて光栄です。これで引退されるということで、強く思うところがあったのでは」と話した。
加藤九段は54年、14歳7カ月の若さで四段に昇段し、史上初の中学生棋士に。藤井聡太四段(14)に塗り替えられるまで最年少記録だった。昨年12月には藤井四段のデビュー戦の相手も務めた。