藤井四段「完敗でした」 デビューからの無敗記録29でストップ
昨年12月のデビュー戦以降、公式戦で歴代最多となる29連勝を記録した最年少プロ棋士、藤井聡太四段(14)が2日、東京・将棋会館で竜王戦決勝トーナメント2回戦に臨み、佐々木勇気五段(22)に101手で敗れ、30連勝はならなかった。初黒星を喫した藤井四段は「連勝はいつかは止まるもの。勝負どころなく敗れてしまったのは残念」と淡々と振り返った。
連勝記録がついにストップした。公式戦で初黒星を喫した藤井四段は「機敏に仕掛けられてそのまま押し切られてしまった」と淡々と話しながらも、悔しさをにじませた。
若手の実力者に屈した。午前10時から始まった対局で先手の佐々木五段に序盤から主導権を握られた。天才中学生は揺さぶりをかけたものの、一度も形勢を逆転できなかった。白いシャツにネクタイ姿で指していたが、最終盤では上着を着て、午後9時31分、静かに投了した。
昨年12月以降、半年以上にわたった無敗記録がストップ。注目を浴び続けた14歳は「完敗でした。読みの甘さを痛感させられました」と振り返った。6月26日に、30年ぶりに最多連勝記録を「29」に更新。毎回の対局時の食事が話題になるなど、フィーバーは社会現象となった。扇子、クリアファイル、ジグソーパズルと四段の棋士としては異例の公式グッズも発売された。この日も報道陣35社120人が詰めかけ、対局が始まる前には会場入りを待つファンが殺到した。
堅苦しくない指導で成長を見守ってきた師匠の杉本昌隆七段(47)は、藤井四段がプロ棋士になった際に「イベントで将棋の普及をするのではなくて、将棋に勝ってタイトルをとることが一番の普及になる」と伝えたという。藤井四段も四段昇段パーティーで「東海地方にタイトルを持って帰ることは悲願」と思いを告白している。今回で竜王戦は敗退となったが、すでに棋王戦も本戦入りを果たしており、今年度中の戴冠の可能性は残る。
かつては悔しい負け方をすると、盤を抱きかかえるように号泣していたが、この日の対局後に悔し涙を流すことはなかった。すべては高みを目指すため。「(タイトルは)まだまだ遠いですので、一局一局頑張っていきたいと思います」。6日の次戦から再出発。負けを糧とし、藤井四段が新たな一歩を踏み出す。