ピース・又吉 自著の朗読劇開催へ 綾部の渡米が刺激「僕もチャレンジ」
お笑いコンビ・ピースの又吉直樹(37)の6年ぶり3度目となるライブ「さよなら、絶景雑技団」が9月9、10日に、東京・よみうりホールで開催される。さらに、10日には同会場で「『やぁ』朗読会」も実施される。相方・綾部祐二(39)の渡米を受け、単独活動を余儀なくされる又吉が、表現者としてさらなる高みを目指すため、初めて自著の朗読イベントを行う。激変する環境の中、「芥川賞作家芸人」という唯一無二の存在が挑む新たな挑戦とは-。
約13年半、寄り添ってきた相方が“独り立ち”して迎えたこの秋、又吉が初めての企画に取り組む。
世間的にもあまり例を見ない、自著の朗読会。又吉は「まず、読むんが好きなんですよ。今までは恥ずかしいから、朗読会とか、番組とかで『ご自身の書いた小説を一節読んで下さい』とか言われても断ってたんですけど、例えば恋人がおるときとかだったら、自分が書いたエッセイとかを聞かせましたし、後輩と飲みに行っても絶対読むんです。読んで聞いてくれてるその時間がうれしいんですよね。ネタ見せてるのと同じ感覚なんです」とその動機を口にした。
「ピース」は解散も活動休止もしないものの、今後は必然的に1人での活動となる。綾部の渡米は、又吉の芥川賞獲得を受けて“格差”を埋めるためとも捉えられるが、又吉の考え方は違った。「チャレンジですね、僕にとっては。ネガティブな意味じゃなくて、綾部がアメリカでチャレンジするというのを聞いて、僕も刺激を受けまして。相方がおらんようになったから1人で舞台に立つというよりは、俺も挑戦したい、という思いが強くなった」と、逆に綾部の決断にかき立てられた思いが強いという。
コンビとして活動している間にも、独力で生み出す笑いへの憧れは強く持っていた。
「ピン芸人の方が1人で2時間しゃべってお客さんを楽しませる、落語家の方が噺で、手品師がマジックで、ミュージシャンが音楽で…というのがかっこいいなと思ってて。僕は自分の作ったものが形にはできるんですけど、お客さんの前で1人で出て行って成立させるって、かなり実力がいるなと」
今回、期せずして1人になったことで、自らの才能を生かして挑むのが、朗読会だった。今回のために新作の短編小説を書き下ろすといい、「いずれは朗読用のテキストを50本とか100本とか作って、どこに行ってもその環境にあったものを読めるようにしたいんです」と今後の展望も語った。
そうした活動が、必然的に小説家としての自身にもフィードバックしていく部分があるという又吉。「火花」「劇場」に続く3作目の長編小説については「あまり期間を空けたくないんで、来年には書きたい」とし、そのテーマを「なんか総合的なものになればいいなと思います。1つの人生観というか」と構想も明かした。
過去には1人もいない、芥川賞作家芸人。自分の立ち位置は芸人か、小説家か。その問いに又吉は「芸人でしょうね」と即答した。「芸人と小説家って、同じカテゴリーの言葉じゃないんじゃないかと思って。芸人の方が範囲が広くないですかね。芸人って、ミュージシャンとか喜劇役者さんとかも、含まれてくるじゃないですか。朗読する作家がいたら、それもある意味芸人になるんじゃないかと。『小説家』というピンポイントの職業に、芸人が吸収されることって多分ないと思うんです」と話した。
芸人と小説家の差を「デパートと専門店の違いといいますか」と説明し、「デパートはデパートで、結構やり繰りするの結構大変なんですよ」と笑った又吉。「僕はそのやり繰りが結構下手で、例えばスケジュール的にどちらかの仕事しかできませんと言われたら、あまり自分で判断できなくて、今までは綾部やマネジャーの言うとおりにしてきたんで、ここからは自分で考えていかないといけない。綾部がいなくなるのは、やっぱり大きいですね…」と改めて新生活を迎える心境も吐露した。