仲代達矢、エスカレートする米朝の挑発合戦に「なんのために戦おうとしてる?」

 黒澤明、小林正樹といった世界的な映画監督の作品に主演してきた日本を代表する俳優の仲代達矢(84)が22日、テレビ朝日系「報道ステーション」に生出演し、エスカレートする一方の米国と北朝鮮の言葉の応酬に「アメリカにしても北朝鮮にしても、なんのために戦おうとしてるんですかね?」と、戦争を知る世代として疑問を呈した。

 「私どもは軍隊には行きませんけど、私が生まれたのは昭和7年で、歴史的に見ますと昭和6年から満州事変というのが起きまして、私が生まれる1年前から戦争に入ったわけです、日本は。それから昭和20年まで14年間、軍国少年として育って、最終的にはですね、私は戦争こそ行きませんでしたけど、昭和20年、中学1年の時に、東京の大空襲にあって逃げ惑いまして、毎日毎日戦争の体験をしてきました」

 「昭和20年3月4月5月と東京大空襲がありまして、私はちょうど渋谷にいたんですが、毎晩のようにB29が来るわけですね。みんな逃げ惑って、麻新宿当たりに行きますと。何百という黒焦げの死体があるんですね」

 仲代はこのように、自身の戦争体験を生々しく語った。

 その上で「アメリカにしても北朝鮮にしても、なんのために戦おうとしてるんですかね?戦争体験者として、一番犠牲になるのは一般庶民じゃないですか」「人の命、戦争と平和という問題を、たまたま役者になっていろいろやってきましたけど…なんであんなに言い合うんでしょうね?」と、米国と北朝鮮の応酬に疑問符。

 「命というものの大切さを私は本当に感じているので、ずいぶん戦争反対の映画とか、あしき体制に抵抗する役とかいっぱいやってきましたけど、次世代の若者に伝えたいなと、戦争と平和という問題を」と、自身の姿勢を明らかにした。

 仲代は現在、主宰する無名塾の公演でブレヒトの反戦劇「肝っ玉おっ母と子供たち」の稽古中。「登場人物は戦争反対って唱える人は一人もいなくて、戦争で飯を食ってる、戦争は商売だって言う。それをお客さんが客観的に見て、やっぱり戦争というのはむごいもんだ、そう感じるんですね」と狙いを説明する。

 「『肝っ玉おっ母-』にしてもね、戦争に対する問題とか平和に対する問題とかっていうのは全編みなぎっておりますので、気力だけで、足腰は弱っておりますけど一生懸命、最後のつもりで頑張ります。特に次世代、若者たち、やっぱり体験してるのと体験してないのとではずいぶん違うと思いますので。われわれ役者というものは映画なり演劇なりでそういうものを作って、平和という問題とか戦争という問題をお客さんにわかってもらうっていうのはあるんですから、そういう状況に今置かれているのは実に尊いもんだと思っております」と、決意を表明した仲代。

 「昔、黒澤明先生に『乱』という映画を主役でやらせていただいたんですけど、あれは親子の戦いですよ。黒澤先生は、最後の遺言だと。親子ですら戦い合うんだから、人間というものは愚かなものよと、天上の神様が俯瞰で見つめている映画ですよ。そういう意味では戦争というものを、特に若い人たちに意識してもらいたいですね」と、恩師・黒澤監督の教えを明かし、「最近そういうもの(反戦)を言い出したのは、同世代は天国に行った人がいっぱいいるんで、せめてむざむざと生き残っている私が、少しそういうことを言おうかなと思ってるんです」と戦争体験者の役割を強調していた。

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