韓国アイドルの飼い犬による人の死亡 日本での罰則は「行列」北村晴男弁護士の見解
韓国のアイドルグループ「SUPER JUNIOR」のメンバー、シウォンの飼い犬(体長約30センチのフレンチブルドッグ)が同じマンションに住む女性の左足をかみ、女性は数日後、この傷が原因とみられる敗血症で亡くなった。飼い犬が人をかんでケガや死亡に至ると日本では飼い主にどのような責任が問われるのか。あるいは問われないのか。日本テレビ「行列のできる法律相談所」に出演する北村晴男弁護士に聞いた。
動物の飼い主に対する民事責任は民法718条によって規定されていることを北村弁護士は示した。条文は「動物の占有者は、その動物が他人に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし動物の種類および性質に従い相当の注意をもってその管理をした時はこの限りではない」となっている。
例えば犬を例に考えると、犬が人をかむことは十分に想定できる。従って飼い主は「愛犬家として一般に要求される十分な安全対策を講じていなければいけない」と北村弁護士は指摘した。つまり、野放しにしていたり、リードをつけていても長すぎて犬を制御できなかったり、どう猛なタイプの犬を自宅敷地内に飼っていて「猛犬注意」などの張り紙による警告をしていなければ、安全対策を講じていないことになる場合が多い。このような場合は民事上の損害賠償を請求できる可能性があるという。
韓国でのケースのように、人が亡くなるという重大事態の場合、日本では飼い主に刑事罰は問えるのか。北村弁護士は過失致死(刑法210条)と重過失致死(同211条)をあげた。
例えば普段は体力的にも飼い犬を制御できる人が、短いリードでつなぐなど安全対策を講じていたが、リードが劣化などにより切れてしまい犬が第三者に襲いかかって死なせてしまったら前者に当たる可能性がある。他方、鋭い牙を持ち攻撃性が強い猛犬を野放しにして実際に人をかんで死なせた場合は後者に当たる可能性が高い。飼い犬を他人にけしかけたら傷害罪や殺人罪に問われることも考えられるという。
例えかまれても飼い主に罪を問えないケースはあるのだろうか。北村弁護士は民法718条が示すのと同様に「相当の注意をもってその管理をした時」は問われないことを指摘。例えば、飼い主が体力的に十分に犬を制御できており、リードも短くて簡単には他者に近づけない場合に、大人の第三者がわざわざ犬に近寄って頭をなでようとしてかまれたら飼い主の過失が問われる可能性は低いという。
シウォンのケースでは普段からリードをつけずに飼っていたとみられ、国内で批判を浴びている。動物を飼う場合は「相当の注意」を払うことが厳しく求められる。
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北村晴男(きたむら・はるお) 弁護士。長野県出身。日本テレビ系「行列のできる法律相談所」にレギュラー出演。趣味はゴルフ、野球。月2回スポーツなど幅広いテーマでメールマガジン「言いすぎか!!弁護士北村晴男 本音を語る(まぐまぐ」を配信中。