中島みゆき 「夜会」を続ける思いを告白…表現の模索は続き声域広がる
シンガー・ソングライターの中島みゆき(65)が26日、東京・府中市の「府中の森芸術劇場 どりーむホール」で「夜会」のガラコンサート「夜会工場Vol.2」をスタートさせた。公演に先駆けて行った通し稽古の後には中島が報道陣の取材に応じ、ステージへの思いを語った。
「夜会」は1989年に始まった、演劇でもない、ミュージカルでもない“言葉の実験劇場”がコンセプトのステージ。中島自身が構成・演出・作詞作曲・主演を努める独特の「不思議なコンサート」だ。「夜会工場」はこれまでの19作品の「夜会」から代表的な楽曲を抜粋して聴かせる“濃縮版”のようなステージとなっている。
「夜会」が始まって30年近くが経過するが、中島は、当初はコンサートが無くなってしまう可能性があったことを明かした。「『夜会』を始めてしまったら、もうコンサートはやらないかもって最初は思ってたんです」。コンサートと「夜会」の両方を続けていくことに疑問を感じたことがあったという。ただ、しばらくの間並行して開催していると「別物」と感じるようになり、両方とも続行することに。「結局仕事が増えたのね」と苦笑いした。
やるべきことは増えたが、思わぬ効果もあった。「夜会」を続けるうちに、声の音域が広がったという。「役柄上そういう声を出さなきゃならないから、無理やり書いてる高い音、低い音っていうのがあるの。中島みゆきではなく、その役の声。曲を書くときのわたしと歌うときのわたしが別人なので、歌わざるを得なくなる。そうすると声が広がっちゃったの。拾い物でしたね」と説明した。還暦を過ぎても、衰えるどころか進化している歌声の秘密は実は「夜会」にあった。
取材日のMCでは“言葉の実験劇場”を続ける思いも語った。「どうやって言葉を表していいものやら。試してみればみるほど分からなくなる。興味の尽きないものです」。シンプルな単語でありながら胸に突き刺さる歌詞を書く中島であっても表現の模索を続けていることを明かした。
今回の「-Vol.2」では、あるポイントで96年の「問う女」楽曲が登場する。なぜその曲順にしたのかを尋ねると「言葉っていうことをストレートに言っている曲をそこに持って行きたかったの。あれが最も簡潔に言っているかなと思って」と説明した。
ステージでは中島自らのアイデアで設置した電光掲示板で、歌っている楽曲がどの年の「夜会」の楽曲だったかを表示。MCでも自ら楽曲を解説するなど、13年の「-Vol.1」より分かりやすく進化している。中島は「“懐かしの夜会をもう一度”だけじゃなく、“夜会って何”っていう方にも楽しんでいただきたい」と門戸が広がることを期待した。ただ、初めてのファンでもベテランでも言葉をしっかりと聞き逃さないようにすることは必須だ。