阿久悠さんの未発表詞に作曲…「一文字も無駄がない」 奥華子インタビュー(後)
アニメ映画「時をかける少女」の主題歌「ガーネット」や、「MAST」「ガスト」「くもん」などのCMソングで知られるシンガー・ソングライター、奥華子(39)が「手拍子なし!涙あり?失恋バラードやダークな曲オンリー」(公式サイト)のスペシャルライブ「奥華子の弾き語りダークナイト」を11月23日、大阪で開催し、昭和の大作詞家・故阿久悠さんの未発表詞に奥が曲をつけた「黄昏のアンニュイ」を初めて披露した。
インタビュー後編では、昭和歌謡の巨人・阿久悠さんの詞に曲をつけ、歌うという大役について聞いた。
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今年が阿久悠さんの生誕80年、デビュー50年、没後10年にあたるのを記念して、レコード会社7社が共同企画したCDアルバム「阿久悠メモリアル・ソングス」が11月15日に発売された。
阿久悠さんの代表曲の他にそれぞれ1曲ずつ、阿久悠さんの未発表詞に曲をつけた新曲が収録されており、ポニーキャニオン盤「うまく行く恋なんて恋じゃない」では奥が栄誉ある仕事を任された。
シンガー・ソングライターとして自作曲を歌ってきた奥は、世代も性別も違う巨匠の作品に対して、どのように臨んだのだろう。
奥は「阿久悠さんの残されている未発表詞っていうのが貴重すぎて、そこに私が曲をつけていいんだろうかという、その責任が重い」という思いと、「すごくうれしくて」という思いが相半ばしたという。
「違和感はないですね。すごく自分が入っていける歌詞っていう、もう初めからそういう感じだったので。本当に阿久悠さんって、一文字も無駄のない歌詞なんだっていうのを、曲をつけている時に改めて思いました」と振り返った。
阿久悠さんとは「私の父、同じ中学なんですね、淡路島で。ずっと小さい頃から『阿久悠さんと同じ中学で2コ上なんだ』みたいな自慢話をずっと(父から)されていて」という縁もあった。「だから今回、一番の親孝行ができたなって。めちゃくちゃ喜んでいて、父親は。そういうつながりもあって、ホントにうれしかった」と、喜んでもいる。
今回、ライブで初めて「黄昏のアンニュイ」を歌ってみて「すっごい難しい曲だなって。レコーディングもそうだったんですけど、音色(おんしょく)一つですごい雰囲気が変わるので」という。
奥は通常、ライブではピアノとキーボードを使用する。ストリングスを足すなどのバリエーションもあるが、今回はピアノだけだ。
「ピアノ一本でやるのもホントに珍しくて。そういう意味で、世界観を作るのがとっても難しい曲だなって思いました。でも、歌詞がやっぱり強いので、詞の強さで大丈夫です」と、阿久悠さんの詞が持つ力を、強く感じたようだ。