政府は、将棋界史上初の「永世七冠」を達成した羽生善治氏（４７）、囲碁で初めて七冠独占を２度果たした井山裕太氏（２８）に国民栄誉賞を同時授与する方向で検討に入った。安倍晋三首相が指示した。菅義偉官房長官が１３日の会見で明かした。実現すれば、将棋界、囲碁界で初。羽生二冠は都内で取材に応じ「検討していただけるだけでも名誉なこと」と話し、都内で行われた七冠祝賀会に出席した井山七冠は「全く想像もしていなかったので本当に驚いている。これに満足せず、上を目指したい」とした。

　２人の大記録に政府が動いた。前人未到の偉業が、将棋や囲碁の発展に寄与し、国民に感動や勇気を与えたと評価。授与式は年明けになる見通しだ。菅氏は会見で「いずれも歴史に刻まれる偉業であり、社会に明るい希望を与えた」と述べた。政府筋は「異論はないと思う」と語った。

　羽生二冠は約１２０人の報道陣が集まった会見で、国民栄誉賞について「驚いたし、光栄なことと思った。将棋が幅広い人に楽しんでもらえるものであり続けられるよう、これからも頑張っていかなければならない」と語った。井山七冠との同時授与となることについて「まさに新記録を塗り替え続けている。隣の世界だが、すばらしい棋士だと思う」と感想を述べた。

　今後の目標については「公式戦の通算１４００勝（残り９勝）が近い目標で、そこを目指したい。今年、引退した（７７歳の現役最高齢記録を持つ）加藤一二三・九段みたいな情熱を持って、前へ進めたらいいなと思う」と意欲的に話した。

　羽生二冠は今月５日の竜王戦７番勝負の第５局で、竜王を獲得。現在七つある将棋の永世称号（竜王、名人、王位、王座、棋王、王将、棋聖）全てで称号を手にする「永世七冠」を成し遂げた。

　井山七冠は祝賀会後、同賞について「囲碁界を注目していただけるきっかけになる。さらに精進していかなければいけない」とコメントした。今年１０月の名人戦７番勝負の第５局で、名人位を奪還。七大タイトル（棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段）全てを保持する全七冠に復帰。２度、全七冠を同時制覇したのは囲碁、将棋界を通じて初の快挙だった。