政治の月9「民衆の敵」とは何だったのか? 脚本・黒沢氏が伝えたかったこと
恋愛ドラマが主流だったフジテレビ系の月9枠に「政治」というジャンルで挑んだ「民衆の敵~世の中、おかしくないですか!?~」(篠原涼子主演、月曜、後9時)が25日、最終回を迎える。月9ドラマに政治のメッセージ性を込めることや、展開が激しいことなどさまざまな反響を呼んだが、脚本担当の黒沢久子氏にドラマを通じて本当に言いたかったことは何か、聞いた。
-夫や子供のために市議になった主人公が、終盤で権力闘争に挑む展開は急すぎるという意見があった。
「教育の機会を得ることができないまま大きくなってしまったがゆえに(社会の問題に)気づかなかった。それが市議になることで世の中が見えてきて、彼女の中にあるポテンシャルみたいなものが開花して突き進んでいくっていう、そういう話にしたかったので、確かに展開はかなり早かったと思います」
-市民の声に向き合う前半の内容を長く続ける手もあったのでは。
「そういう方向性もすごくあったと思うんです。けど、その一方で、もっと大きく、日本だけでなく、世界が危険な状況に向かっているんじゃないのかなというのがあって、後半はそういう方向に向かわせようという2部構成が起きたということですね」
-新人市議が集まる研修室など、現実にはない設定もある。
「監修の方からも『ないですよ本当』と言われたんですけど、『そういうのが起こりえないんですか?』となって。自治体によってルールは違うところもあるし、フィクションなので、そのあたりはそういうことでいいんじゃないかと」
-世の中にどう伝わったと思いますか。
「批判は出るだろうなというのは最初から分かっていたんですよね。どこまで攻めて、どこまで妥協するかは考えました。9人の人に嫌われても1人の人に大好きだと言われる番組があってもいいんじゃない?って」
-最終回はどう見てもらいたいか。
「ドラマの結末でバンっと(結論を)私たちから提示はしていません。あなたならどうするんですかというふうにこっちも問いながらつくってきたし、見ている人も私ならどうしようと考えながら見てもらえるとうれしいです」
-保育園落ちた…のような声からドラマが着想されたと聞いたが。
「ママさんが市議になると必ずママの味方というところから出てくるじゃないですか。私は正直、そういうことを言っている間は女性議員は限界があると、自分で限界をつくっているんじゃないのというのがあるんです。ママであるとか、母親であるとか、それも大事だけど、まずは男、女関係ないところで仕事をするんだというところが、本来のこれからの女性政治家に期待したいんですけど。やっぱり間口としては身近な問題を解決しますという女性市議の方々はいっぱいいるので、そこから(物語を)入りましょうよ、というところです」
-さまざまな問題をドラマに織り込んだ。
「一番の核、私が伝えたかったのは多様性を認めようよっていうことで、多様性からはみ出した人たちをどれだけ入れられるかっていう。何度も敵か味方じゃないんだよって(セリフで)言わせてるんですけど、敵か味方かレッテル貼りしながら生きていくのはダメなんじゃないのっていう、今、本当にそういう世の中になっているという危機感があって」
-最終回の見どころを。
「佐藤智子(演・篠原涼子)が『民衆の敵』というのは何か、ということを言います。あと藤堂誠(演・高橋一生)の政治信条が明らかになっていきます。政治信条は対立するけど、実際には対立していない2人のあり方が見どころと思っています。(異なる意見の2人が、向き合うこと)それが民主主義じゃないかなと思います」