将棋の藤井聡太四段（１５）が１６日、都内のホテルで行われた羽生善治竜王（４７）の「第三十期竜王戦就位式」に出席した。竜王戦ランキング戦６組の優勝者として表彰された藤井四段は、式の前に昨年１２月に永世竜王となり史上初の「永世七冠」を獲得した羽生竜王とともに会見した。公の場で初の２ショットを披露した２人は、２月１７日に行われる公式戦初対局「朝日杯オープン戦」準決勝に向け、静かに闘志を燃やし合った。

　国民栄誉賞の受賞も決まった将棋界で唯一無二の“神”に、１５歳の中学３年生が挑む一戦。それでも、羽生竜王と初の２ショット会見に臨んだ藤井四段は、格の差を感じさせずに堂々と決意を示した。

　紋付き袴姿の羽生竜王に従い、緊張気味にスーツ姿で現れた藤井四段。冒頭、若干声が裏返りかけた際には、隣の羽生竜王が思わず笑みを浮かべるシーンもあった。だが、１カ月後の対局の話題となると、謙虚一辺倒の発言が、微妙に変わった。

　これまで、羽生竜王とは非公式戦で２度対戦している。昨年３月の獅子王戦では敗れたが、４月の「炎の七番勝負」では勝利した。それから約１年を経た今回の戦いに、藤井四段は「私自身もいろいろな経験をさせていただいて、成長することができたと思っている。その成長を見せることができればと思っています」と力強く語った。会見後の就位式でも「勝負の上では対等、という気持ちで、全力を尽くして頑張る」と気後れは見せなかった。

　一方の羽生竜王は、第一人者らしく、終始、泰然自若。「もちろん、どこかで必ず顔を合わせるとは思っていましたが、こんなに早く実現するとは思っていなかったという意味では、少し驚いています」と余裕を見せた。その上で「全体として８割の勝率というのは、将棋の世界ではちょっと考えられないような大変な数値ですし、結果だけではなく内容も伴っている。非常に強い、手強（ごわ）い存在であると認識しています」と、１５歳の新星に警戒感も示していた。

　２月１７日、希代の天才と新たな才能の公式戦初の激突が、日本中の注目を集めそうだ。