辻一弘氏にオスカー! 日本人初メーキャップ賞
米映画界最大の祭典「第90回アカデミー賞」発表・授賞式が4日(日本時間5日)、米ハリウッドのドルビー・シアターで開催され、メーキャップ&ヘアスタイリング賞に「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」の辻一弘氏(48)=米国在住=ら3人が選ばれた。日本人は同賞初受賞で、辻氏は2007、08年に続く3度目のノミネートで栄冠を手にした。また、ギレルモ・デル・トロ監督(53)の「シェイプ・オブ・ウォーター」が作品賞、監督賞など4冠に輝いた。
特殊メークの技術が最高の評価を得た。似ても似つかないゲイリー・オールドマン(59)を、約3時間半かけてチャーチル元英首相に変貌させた辻氏は、プレゼンターが受賞作品名を読み上げると、少し緊張した面持ちで登壇。眼鏡をかけると、オスカー像を手に「ゲイリー・オールドマンさんに感謝したい。すばらしい役者であり、アーティストであり、本当の友人」と流ちょうな英語で名優へ敬意を表し、「夢がかなえられました」と喜びをかみしめた。
1969年、京都市出身の辻氏は、12年に映画界を引退し、特殊メーク技術を生かした肖像彫刻の芸術家に転身していた。だが、オールドマンの熱烈なラブコールで一時復帰、栄誉に輝いた。受賞作「ウィンストン-」の企画段階で「あなたが引き受けてくれなかったら、私は出ない」と直々に口説かれた。辻氏は映画の内容にも興味が湧いて引き受けたが、チャーチル氏との容貌の違いが明らかな上、若くないオールドマンの皮膚の動きなど課題が山積。試行錯誤した末、半年後にカメラの前に現れた「チャーチル」に感激したという。
この日は“辻マジック”の効果もあって、オールドマンも主演男優賞を獲得。ステージで辻氏の名前を挙げ、「芸術に感謝します」と口にした。
辻氏は授賞式後の会見で「それ(オールドマンからの要請&復帰は)は最高のタイミングでした」と振り返り、「私たちは歴史的偉業を成し遂げられたと思います」と充実感をにじませた。