藤井六段 師匠・杉本七段に勝った 千日手挟む熱戦…終局後は仲良く食事に
最年少棋士の藤井聡太六段(15)が8日、関西将棋会館で行われた王将戦1次予選で師匠の杉本昌隆七段(49)と公式戦初対局を行った。お互い手の内を知り合う関係らしく、千日手での指し直しをへた熱戦となったが、最後は111手で師匠を撃破。「とても良い経験になりました」と謙虚に振り返った。杉本七段は弟子の成長に涙を見せた。藤井六段は14連勝となり、自身の持つ29連勝に次ぐ今年度単独2位の記録に。通算成績は69勝11敗となった。
注目の師弟対決は弟子が“恩返し”の勝利を挙げた。
対局前の棋士控室ではお互い、あいさつを交わした程度。対局室でも視線は合わさない“戦闘モード”だった。午前10時に始まった対局は、先手の杉本七段が「棋士人生の中で一番注目されている対局」と位置づけ、2分かけて初手を指したのに対し、藤井六段は、緊張する様子を見せなかった。途中、双方が扇子を手に前傾姿勢で鏡のように構え盤面を見つめるなど、師弟ならではの様相も見せたが、午後1時18分に同じ局面が4度出てきたため、千日手で指し直しとなった。
2人での対局では経験したことがないという指し直し局では、藤井六段が居飛車穴熊を採用。杉本七段は「自身の原点」でもある渾身(こんしん)の四間飛車で応じたが及ばず、「なくなりました」と投了を告げた。藤井六段は感想戦では双方笑顔をみせながら忌憚(きたん)ないやりとりを1時間ほど続け、終了後は兄弟子らを交えて食事に行くなど、“仲良し師弟”に戻っていた。
藤井六段は小学4年生で弟子入り。すぐに平手で師匠に勝利した。杉本七段はその才能にほれ込み「藤井がプロになれなかったら、責任を取って自分が引退する」との覚悟で育ててきた。棋風が異なることもあり、色を付けてはいけないと練習将棋の回数は意図的に減らしていた。
藤井六段は今年度59勝目。これまで3人しか成し遂げていない年度60勝まで、あと1勝とした。