アカデミー賞の辻一弘氏 日本でオフなく大忙し「早く帰って仕事しないと」
映画界最大の祭典「第90回アカデミー賞」でメーキャップ&ヘアスタイリング賞に輝いた辻一弘氏(48)=米国在住=が20日、都内で会見し、受賞の喜びを語った。辻氏は「ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男」で同賞主演男優賞に輝いたゲイリー・オールドマン(59)を、特殊メークでチャーチル元英首相に変貌させた。
日本人として同賞初受賞した辻氏はこの日、午前5時ごろに居住する米ロサンゼルスから帰国。オスカー像を手に会見場に現れると、無数のフラッシュを浴びた。凱旋(がいせん)の気持ちを聞かれると、「驚いてますね。反応と配給会社の人がすごくよくしてくれて感謝してます」と笑顔を見せた。日本でオフはないといい、「早く(ロスに)帰って仕事をしないといけない」と多忙ぶりを明かした。
オールドマンとの関係についても改めて質問が飛んだ。2001年の「猿の惑星」でタッグを組む予定が、オールドマンの降板で消滅。その後、02年に辻氏のポートレート作品を個人的に見たオールドマンが感動し、「いずれ仕事をしたい」と話していたという。機会がないまま、辻氏は12年に映画界を離れたが、16年にオールドマンからメールがあった。「チャーチルの映画の話がある。(君が)メークをできるなら撮る。ダメならあきらめる」。映画界を去る決断は重く、辻氏は「簡単に(この仕事を)取ったら、人生を裏切ったよう」にまで感じたという。それでも、「ゲイリーさんと仕事をしたかった。人生で1回あるかないかの仕事」と思い直して引き受けた。その結果がアカデミー賞に結びついた。『ダブル受賞』となったオールドマンとは「お互い良かった」と喜び合い、落ち着いたらゆっくり会う予定とした。
仕事の癒やしが猫であること、20年ごろに日本で個展を考えていることなどを明かした辻氏。日本の若者には「自分の心に正直に。(他人の意見に)流されてしまうと後で後悔する。10年続けること。海外に1カ月以上、住んでみることが大切」などとアドバイスを送った。
序盤は会見を進めた司会者がいた右手を向きながら応答。「僕、そういう(質問者を見ない)のは苦手」と前方の取材陣そっちのけとなり、司会者が正面側に移動する珍しい場面もあった。