バカリ「ワンカット」番組は「30分間のIPPONグランプリ」…番組P語る
コント、脚本、大喜利、ラジオに音楽番組のMC…。ジャンルを問わず活躍するお笑いタレント・バカリズムのレギュラー番組の中でも異彩を放っているのが、テレビ東京系列のBSジャパンで放送されている「バカリズムの30分ワンカット紀行」だ。4月からは金曜深夜0時に放送時間を変える(初回は同月6日深夜)中、番組内容も進化を続けている。バカリズム、テレビ東京の荻野和人プロデューサーへの取材から、その魅力をさぐった。
番組内容はタイトルの通り。VTRを30分間ワンカットで撮影し、ある町やスポットの魅力や面白さを伝えるというものだ。バカリズムは周囲から「僕がロケに出る」と思われてたというが、撮影は監督とステディカムという手ぶれなくスムーズな映像を撮影できる装備をつけたカメラマンで行われる。バカリズムはスタジオで、その30分のVTRを30分間見てリアルタイムに突っ込みやコメントを挟んでいく。映像をカットしないため“編集放棄番組”として話題になった(実際には早回しやテロップ挿入などの編集はある)。
こう書くと誤解されるかもしれないが、撮影の際には町の人への“演出指導”はたっぷりと行われる。セリフや登場の仕方、動きまで入念に打ち合わせをして、いかに30分のVTRに情報を詰め込めるか、を楽しむ番組だった。町の人々のきびきびとした演じぶりは、西荻窪を紹介した初回にバカリズムは「劇団西荻窪だ」と漏らしたほどのものだった。
荻野プロデューサーは「まずは町ということでやっていたんですけど、町以外にもスポット。サンシャイン水族館、花やしきとか絞り込む。町(の方)を進化していく中で120分鎌倉から江ノ島までつなぐというのもやったんです」と企画の発展を振り返る。ただ、約1年、番組を続ける中で「(企画として)結構いきつくところまでいったんです」と壁にぶちあたった。
そこでチャレンジしたのが「リアル30分ワンカット紀行」。違うのは演出をほぼ排除した点にある。放送枠を移動した初回の放送は「関東最東端の駅である銚子鉄道の海鹿島(あしかじま)駅」から、ちょうど30分間で何が撮れるかは運次第、というコンセプトで放送する。
下見はするものの、何が撮れるかはでたとこ勝負で、町の人も番組の意図通りに動かない。それでも30分が過ぎれば撮影は終了してしまう。あせる監督とカメラマン。そんな撮影側の心理を疑似体験ができるのが魅力だ。「演劇に振ってたものをリアルに振った」と表現する荻野プロデューサーは「今後、もしかしたらいろんな発明があるかもしれないんです。カメラを30分固定にしておいてということも考えられるかもしれない」とさらなる進化を予言している。
4月6日放送回の収録を終えたバカリズムは「リアル30分ワンカット紀行」を「結構すきで、本当にどうなるか分からない」と表現。「監督さんの性格によって内容が変わったりして。今日は非常に優柔不断な監督さんだったせいで、ハラハラ、イライラしました。面白かったです」とその面白さに太鼓判を押した。
ただ、バカリズムも30分間ノーカットで番組を作り上げなければならないプレッシャーがある。後からコメントを挿入することができないためで万が一大きなミスがあれば撮り直しとなる。周囲には「この番組は緊張する」と漏らしているといい、荻野プロデューサーは芸人としての反射神経が求められることから「30分間の『IPPONグランプリ』みたいな大変さがある」とMCの大変さを思いやった。
「池の水全部抜く大作戦」シリーズや「出川哲朗の充電させてもらえませんか?」のような企画力や演出力勝負の番組が印象的なテレビ東京グループなだけに、今後の展開にも期待は十分。バカリズムは「ゆくゆくは海外。ハワイワンカット紀行。そのVTRを我々がハワイで見る。それが夢ですね」と野望を掲げている。荻野プロデューサーも「(バカリズムを)ちょっと外に引っ張っていって。もしかしたら海外にロケにいくかもしれません」と否定せず。BSで好評を得たら、地上波や海外ロケへと舞台を移していくかもしれない。