【専門家の目】過度の飲酒癖、TOKIO山口…依存症患者にみられる症状とは
強制わいせつ容疑で警視庁に書類送検されたTOKIOの山口達也(46)が26日、東京都内で会見を開き、事件について涙ながらに謝罪した。2月12日に被害女性を自宅に呼んだことが事件の発端で、その際、山口は酩酊状態だったという。当日まで約1カ月、飲酒に伴う肝臓の数値悪化を治療するために入院し、退院した日に「焼酎瓶1本ぐらい」を飲んだという。酒への欲求をコントロールできない様子がうかがえた。アルコールへの依存が過ぎると一般的にどのような症状が見られ、治療が必要となるのか。松本クリニック(兵庫県芦屋市)の松本浩彦院長に解説してもらった。
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アルコールの飲みすぎでγーGTPが500、GOTとGPTがそれぞれ1000を超えるほどの肝機能障害になると、入院して断酒していただくことになります。肝臓は再生能力が強く、他に病気がなければ4週間の断酒で数値は正常に戻ります。ところが、退院したその日にすぐお酒に手を出す患者さんは圧倒的に多く、私の知る一番ひどい例は、入院中の患者さんが徒党を組んで病院を抜け出し繁華街に通っていました。
アルコール依存症とはまさにそういう病気です。国際的な診断ガイドラインがあり、アルコールに対する強い欲求、自制困難、断酒時の禁断症状、アルコールに対する耐性など、6つの項目で判断されます。
実はそういう人のための「抗酒薬」と呼ばれる薬があるにはあります。抗酒薬を服用中に飲酒すると、悪心・嘔吐・頭痛などの反応が起こり、お酒を飲みたくなっても、気持ち悪くなるからやめよう、と断酒に役立ちます。ただしこれには大きな落とし穴があります。お酒を飲みたくなったら抗酒剤の服用をやめてしまえば良いのです。
近年これとは違い、脳に直接作用し、飲みたいという気持ちそのものを軽減させる薬も開発されています。ただし、間違いなくアルコール依存症であること、心理社会的治療と併用すること、断酒するという強い意志があること、禁断症状があればそちらの治療を終了してから使用することなど制約が多く、安易に飲んで誰でもすぐ断酒できるというものではありません。
また臨床の現場で驚くことは、睡眠導入剤とアルコールを一緒に摂取している人が多いことです。睡眠剤を飲んでお酒を飲むと、薬で眠くなり飲酒量を減らすことができる、と言うのがその人たちの言い分です。確かにそれも一理あるでしょうが、もしうまく眠りにつけない場合、際限なく飲酒を続け、最後には記憶も飛んで酩酊状態になり、反社会的行動を取りかねない危険があります。酒は飲んでも飲まれるな。昔の人はいい言葉を残したものですね。
◆松本浩彦(まつもと・ひろひこ)芦屋市・松本クリニック院長。内科・外科をはじめ「ホーム・ドクター」家庭の総合医を実践している。同志社大学客員教授、(社)日本臍帯・胎盤プラセンタ学会会長。