日本臨床薬理学会、TBS「ブラックペアン」に抗議 実在のCRCへの「侮辱」
日本臨床薬理学会は4日までに、TBS系の医療ドラマ「ブラックペアン」(日曜、午後9・00)で描かれている臨床研究コーディネーター(CRC)の姿が、あまりにも現実と乖離していると指摘し、公式フェイスブックにTBSに送付予定とする文面を掲出した。
文面ではCRCの本来の役割、使命を解説し、一般的に治験コーディネーターと呼ばれる職種とほぼ同義としたうえで「現在、貴局で放送中のブラックペアンにおいて登場する治験コーディネーターとは、まったく非なるものであります」としている。
同学会は「貴局ホームページの説明では、医療機関や製薬会社などの医療関係の企業と契約して働く方から、フリーで様々な場所で働く方まで、幅広い活躍をしていますとありますが、製薬企業と契約するCRCは存在しません。これはCRAと呼ばれる全く別の職種のことを指していると思われます」と指摘。
さらに「ドラマの演出上、登場人物の行動は、治験コーディネーターの本来の業務とは異なるものも含まれていますと断られてはいますが、第1話、第2話で描写された治験コーディネーターの姿は、現在、患者さんのために、医療の発展のために真摯に努力しているCRCの心を折り、侮辱するものであったと感じます」と批判している。
ドラマでの描写に対して「CRCは医療機関のスタッフとして患者様をサポートしており、スーツを着てかっこよくこなせる業務ではありません」「担当医師を高級レストランで接待するCRCも100%おりません」と指摘。
また「治験にかかわるものたちが驚愕したのが、患者さんへの負担軽減費300万円というものです」と提起し、負担軽減費は「ほとんどのところで、一回の来院あたり、7000円~8000円としています」「高額の軽減費で治験への参加を誘導することは厳に戒められております」と説明。「300万円という額はなんらかの別の費用を誤解されたものと思われます」としている。
同学会は「これらのことは、ドラマの演出上という言葉で片付けられないと私たちは考えます」「日々、患者さんに相対しているCRC達が、医師達に高額の接待を行い、人によっては高額の負担軽減費を支払っていると誤解されることはCRCを認定している学会として残念でなりません」との考えを明記し「この番組により患者さんがCRCという職種に不信感を持ち、治験を通じた新薬・医療機器開発へご協力を頂けなくなるとしたら、それは医療イノベーションを目指す日本にとって大きな損失につながります」とした。
「ドラマだから、フィクションだから、という論法もわからなくはありませんが、今回の描写は全く異業種のものであります」と指摘し「貴局におかれましては、CRCの使命、現状等を正しくご認識頂き、あまりにも現実と乖離した描写を避けて頂くよう希望する次第であります」と求めている。
ドラマのHPでは「治験コーディネーター」を説明する記載があり、加藤綾子が演じる「フリーの治験コーディネーター」に関して「ドラマの演出上、登場人物の行動は、治験コーディネーターの本来の業務とは異なるものも含まれております」と記している。