桂歌丸さん死去【悼む】 「笑点」に感謝の一方、最後まで見せた飽くなき“落語欲”

 落語家の桂歌丸(かつら・うたまる、本名・椎名巌=しいな・いわお)さんが、2日、慢性閉塞性肺疾患のため、横浜市内の病院で亡くなった。81歳。最期まで現役に執念を燃やした歌丸さんを、演芸評論家の渡邉寧久氏が悼んだ。

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 二の句が継げなかったことがある。

 2017年8月11日、東京・国立演芸場の高座で「牡丹灯籠 お露新三郎 出逢い」をしゃべった後のことだ。高座の感想を求めると、通常であれば「あんなもんですよ」「疲れましたけど」という風に軽めに返してくれる師匠が、つらそうな表情で「苦しかった」。その一言だけで、迎えの車に乗り込んだ。

 満身創痍(そうい)の近年だった。酒も飲まず、「唯一の趣味は釣り。それももうできない」と明かした後、「だから落語だけなんです」。数年前に聞いた覚悟だった。

 「『笑点』の歌丸では終わりたくない」。落語家として自分を育ててくれた演芸番組「笑点」に感謝する一方、“落語欲”がわきあがる。

 60代の半ば、当時TBS落語研究会のプロデューサーに、落語中興の祖・三遊亭円朝の作品、いわゆる“円朝もの”の口演を勧められた。「あれは転機でしたね」。以来、怪談噺、人情噺など長講に挑み続けた。

 “枯れた”と例えられる芸もあるが、歌丸師匠のそれは常に生っぽかった。肺を患っても、酸素注入器を鼻から挿入し高座を務めた意欲。最期まで現役として、次のステージを見すえた高座だった。もう生で聴くことはできない。合掌。

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