堀内孝雄 新曲「みんな少年だった」は団塊の世代を「互いに鼓舞する」1曲
シンガー・ソングライターの堀内孝雄(68)が8月22日に1年7カ月ぶりのシングル「みんな少年だった」をリリースする。“団塊の世代”である堀内が、同世代に向けて「今日を生きよう」と呼びかけるメッセージソングだ。9日、神戸市のデイリースポーツを訪れた堀内が、新曲への思いを語った。
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堀内は1971年にアリスを結成し、翌72年にデビューした。当時からソロでもヒットを飛ばしていたが、81年の活動休止後はソロ活動が本格化。ニューミュージックから演歌、歌謡曲にかじを切り、90年に「恋唄綴り」で日本レコード大賞を獲得した。
堀内は「このタイプの人は他にいない。ド演歌を歌って、フォークソングも平気で歌う人っていうのも、切り替えの妙味」と自負する。「もともと三橋美智也さんが大好き」というだけに、ニューミュージックのフィールドから演歌、歌謡曲畑への進出にも、抵抗はなかったという。
「いいものはいいんだから、正直になればいい。楽になれば。演歌っぽい詞が来たら、どんなメロディーをつけようか、いつも楽しみなんですよね」
年末恒例だった日本テレビ系の年末時代劇では6作の主題歌を手がけ、故藤田まことさん主演のテレビ朝日系「はぐれ刑事純情派」シリーズでは1988年から2006年まで主題歌を手がけた。
「もともと広範囲にわたって、色んなタイプの曲を歌いますんで。年末時代劇スペシャルだったらそれ風の歌を作りますし、『はぐれ刑事純情派』ならどうしてもそういう色合いのものが多くなります。物語が先行している場合は逆らってもしょうがない。それに沿って歌作りをします」という言葉からは、プロフェッショナルとしての矜持(きょうじ)がにじむ。
一方で、「ドラマの主題歌はドラマの色合いに合わせるけど、内容はその都度の時代性を歌ったつもり」と、同時代の感覚も歌に乗せてきたという。
「そういう意味では色んな切り口で歌ってくれって要望されて歌作りをしたのが幅の広さにつながっている。いまさらながら良かったと思いますね」と振り返り、堀内孝雄という歌手のあり方を「俳優さんに似てるのかもしれない。歌手人生、どんな色に染まろうかと。やってる本人はメチャクチャ楽しいですよ」と説明した。
新曲は「自分の時代性を自由に歌えばいいんじゃないか」と作ったもの。堀内は1949年生まれで、いわゆる団塊の世代だ。自分たちを「時代の変わり目、変わっていく時代を塊として経験している」世代だと捉えており、これまでも同世代に向けて歌ってきた「傾向は強い」という。
「上にも下にも歌わないというか、常に同世代を一番強く意識してるんじゃないですかね。もっと上の人にもとか、もっと若い人もとか、一切思わなかった。いつも同窓会をやっているみたいな感じです。同じ目線の高さでずっと歌ってきたから、それは変わらないと思う。他の世代に向けて歌わなくてもいい。そういう意味では、長く歌っている上でとても良かった」
曲作りでも、「隣に題材を見つけて、それをぶつけていく」という。例えば、前作「空蝉の家」では、社会問題化している空き家をテーマに取り上げた。
「同じ時代性の中で、同世代にエールを送っているというか。それは鏡のように自分に全部跳ね返ってくるという感じで。トシをとると、懐古趣味じゃないけど思い出話が多くなるし、フッと寂しくなる時があるじゃないかと思う。それぞれを互いに鼓舞するためにも、そういう1曲があったらまたちょっと頑張れると。ひとかたまりですから。何だかんだあるけど、みんなよく頑張ってますよね」
新曲のリリースから間髪入れず、9月1日に東京・丸の内コットンクラブ、8日に名古屋ブルーノート、9日にビルボードライブ大阪でアコースティックライブを行う。
「毎回そうですけど、(選曲が)悩みの種です。メチャクチャ(曲数を)作りましたからね」と笑い、「外せない曲もあるけど、リニューアルしないと楽しんでもらえないから」と、新たなコンサートの提供に意欲を燃やしている。
◆堀内孝雄(ほりうち・たかお)1949年10月27日生まれ、大阪市出身。3人兄弟(姉、兄)の末っ子。71年、アリス結成。72年、デビュー。「遠くで汽笛を聞きながら」、「冬の稲妻」、「ジョニーの子守唄」、「秋止符」、「狂った果実」などを作曲。ソロでも「君のひとみは10000ボルト」、「南回帰線」(滝ともはるとのデュオ)がヒット。81年、アリス活動休止。88年、紅白歌合戦初出場。90年、「恋唄綴り」で日本レコード大賞。2014年、ブラザーズ5結成。血液型O。