はがき職人兼アニソン歌手・YURiKAの野望「リスナーに寄り添いたい」

 元ラジオのはがき職人、現アニメソング専門の歌手。異色というより、偏った経歴の持ち主が春から文化放送のインターネットラジオを担当し、ファンの間で話題になっている。かつての経歴を生かし、素性を隠して自分の番組にお便りを投稿したかと思えば、リスナーとの交流で1曲分の歌詞を作り上げてしまう。そんなラジオとアニソンを愛する歌手・YURiKA(22)に迫った。

 今年5月のある日、ネットラジオ番組「A&G ARTIST ZONE YURiKAのTHE CATCH」でのこと。ラジオネーム「これからサマー野郎」さんの普通のお便り、いわゆる「ふつおた」が放送作家の選考を突破してパーソナリティーのYURiKAのもとに届いた。内容は「親戚がガラケーからスマホに変えたんですけど、おすすめのアプリがないかっていうので…。YURiKAさんはどんなアプリを使っていますか」。何の変哲も無いメールに見えるが、実はYURiKAがこっそり自分で投稿したものだった。お便りを選別する放送作家には伝えていないため“八百長”ではなく、その日の放送内容にマッチしていたとして他のメールと同じ基準で選ばれた。その証拠にエンディングでネタばらしをすると、スタッフやリスナーから驚きの声が上がった。

 パーソナリティーなら自分からフリートークで話題を切り出すこともできるのに、どうして自分の番組にわざわざ投稿をするのか。「本当にラジオが好きなことを、適当だと思われたくないし。私はリスナーに寄り添いたいです、という意思表示もかねて、メールはいまだに送っています」と話す筋金入りのラジオファンだ。小学6年生のころに人気声優の堀江由衣が出演する「堀江由衣の天使のたまご」と出会い、ラジオにのめり込んだ。「田村ゆかりさんの『いたずら黒うさぎ』とか、神谷浩史さんと小野大輔さんの『DGS(神谷浩史・小野大輔のDearGirl~Stories~)』とか。『こむちゃっとカウントダウン』とか。鷲崎(健)さんと浅野(真澄)さんがやってた『アニスパ』とか聞いていましたね」。少し聞いただけで、次から次へと文化放送でなじみ深いアニメ関連ラジオの名前が飛び出してきた。

 こうした番組に「憧れの人に名前を呼んでもらいたい」とはがきやファックス、メールを送り続けた。作戦を練り、ネタコーナーよりも、トークの幅がひろがるような話題を提供する形で「ふつおた」を重視。「読まれたいなという気持ちより、この話を聞きたいという気持ち」をパーソナリティーに届けた。「ツイッターでネイルを替えましたと言っていたら、そっちから日常的な方を拾って」など、ささいな変化をキャッチして採用につなげていたという。

 はがきを読まれた喜びは、それを読む側になった今も大切にしている。8月15日に発売されるニューシングル「ふたりの羽根(アーティスト盤)」には、リスナーからフレーズを募集して歌詞をくみ上げたカップリング曲「#ザキャッチ」を収録した。番組を手がける文化放送の周波数や、YURiKAの性格、番組内で頻繁に出てくる単語など、いい意味で“内輪受け”を極めた歌詞をつくり、リスナーを何人か呼んでコーラスまで録音してしまった。「俺たち最強!感はありますよね」と一体になっての作品づくりを、自分自身も楽しんでいる。

 幼稚園のころから歌手を志してはいたが、今は「アニメソング専門」の歌手として活動している。あえて狙いを絞ったきっかけは小学6年のころ。当時、CMなどでよく流れていた「創聖のアクエリオン」のテーマ曲のサビに強い衝撃を受けた。「数十秒で人の興味を引くのはアニソンだけだとすごく思って、歌手になりたいっていうよりアニメの歌を歌う人になりたいと思って」。アニメ関連のラジオにのめり込みつつ、オーディションを受けたり、自主的にライブを開催したりCDを作成したりしてチャンスを待った。NHKののど自慢では「美少女戦士セーラームーン」の「ムーンライト伝説」を歌い、チャンピオンにもなった。アニソンを思い続けて8年ほど。2016年に「これがダメなら資格を持っていたので保育士になろう」と背水の覚悟で挑んだ「第一回TOHO animation RECORDS 次世代アーティストオーディション」に合格。17年2月にアニメ「リトルウィッチアカデミア」のオープニングテーマ「Shiny Ray」でメジャーデビューを果たした。

 アニソン歌手になるという夢はかなったが、「夢はかなっていくけど、良かったね、楽しかったねで終わらせるんではなくて、今は後押しをしてもらっているファンの方を引っ張っていける歌手になりたいですね」とまだまだ前を向いている。試しにラジオでやってみたい企画を聞くと「『#ザキャッチ』20連発というのをやりたいなと。コールもあるので、練習をかねて」と同じ「#ザキャッチ」だけを延々歌うライブを希望した。名ラジオパーソナリティーは古今東西、どこか“ぶっとんだ”ところがあるが、その素養はあるかもしれない。

関連ニュース

編集者のオススメ記事

芸能最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス