シンガー・ソングライターの松任谷由実（６４）が２３日、岩手県・盛岡タカヤアリーナで全国ツアー公演を行い、キャリアの集大成となる“タイムマシーンライブ”で４９００人を魅了した。前日２２日に同所で１４会場３０公演のツアーをスタート。ベスト盤的な選曲に、ライブ演出も過去４５年の中から特徴的なものをよみがえらせ、ツアーの総制作費は３０億円に及ぶという。３９年前のライブで象に乗って登場した“伝説”も再現するなど、壮大な時間旅行に誘った。

　２曲目からファンの度肝を抜いた。センターステージの真ん中からユーミンが現れた…と思った瞬間、その下から象が出現。高さ２・４メートルの象の背中に座り、してやったりの笑顔で歌声を響かせた。

　象は鼻と尻尾を揺らし、間奏で「パオ～ン！！」と鳴く完成度だったが、実はロボット。伝説のライブの３９年ぶりの再現だった。ユーミンは７９年のツアーで東京・中野サンプラザ公演２日間のみ、象にまたがって登場。当時は本物の子象で、ファンの間では語りぐさとなっている。

　４月にデビュー４５周年記念ベスト盤を出したことから「タイムマシーンツアー」と銘打ち、過去のライブ演出を復活させた。着物や宇宙服など、これまでこだわってきた衣装も８変化。髪をソバージュにし、ライダースジャケットを着た８２年のツアーの“バブリーユーミン”では「しもしも～。私の衣装の中でも１、２を競う奇抜さです」と平野ノラ節で笑わせた。

　選曲も「春よ、来い」「守ってあげたい」など過去２枚のベストアルバム収録曲が中心。シンガー・ソングライターとライブアーティスト、２つの顔で半世紀近く先端を走り続けてきたユーミンだからこそできる、曲も演出もオールタイムベストな２８曲で２時間半を駆け抜けた。

　集大成的なライブとなり、最後には「これで引退かと思われる方がいるかもしれませんが」とニヤリ。続けて「私は終わりませんよ！！まだまだ聴いてもらいたい曲がいっぱいあるし、見てもらいたいショーの企画がいっぱいあります！！」と新たな歴史を作っていく。