「殯（もがり）の森」「あん」「光」などを監督し国際的な映画賞の常連でもある映画監督の河瀬直美監督（４９）が、２０２０年東京五輪・パラリンピックの公式映画監督に就任したことが２３日、発表された。日本開催の大会の公式映画は、６４年の東京大会での市川崑監督、７２年札幌大会の篠田正浩監督（８７）、９８年長野大会のバド・グリーンスパン監督に続く４作目。五輪公式映画全体では５人目の女性監督となる。会見した河瀬監督は「運命のような感じ」と喜びを爆発させた。

　５６年ぶりとなる日本での夏季五輪。その公式映画の指揮は、世界にその名をとどろかせる女性監督に託された。河瀬監督は「大変驚いています。そして、自分に与えられた役割をしっかり全うしていきたいと考えております」と心境を吐露した。

　高校時代にバスケットボールの奈良県代表として国体に出場するなど、映画界きっての“スポーツウーマン”としても知られる。それだけに「映画監督という職業を得て、歴史的な東京オリンピックを記録させていただけるのは、私が映画監督になったのはこのためなんじゃないかというぐらい、運命のような感じがします」と強い思いを示した。

　タイトルや予算規模は未定だが、「せっかくいただいた時間が、今から開催終了までありますので、事前にもカメラを向けられる場所があれば足を運んで撮影をしたい。さまざまなところでドラマが始まっていて、ドラマを見続けることが醍醐味（だいごみ）だと思っています」と早くもエンジン全開。２０２０年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長（８１）も「もうドラマは始まっている」とし、河瀬監督の印象を「すごく素人っぽくて純粋な人だなあと。純粋というか純情な人だなという感じがしました」と語った。

　河瀬監督は１９９７年、第５０回カンヌ国際映画祭に「萌の朱雀」を出品し、史上最年少の２７歳で新人監督賞を獲得。０７年には「殯の森」で同祭のグランプリを獲得するなど、国際的な受賞経験が豊富。加えて作品の芸術性、ドキュメンタリー映画の経験、公式映画への姿勢がオリンピックの精神、および東京大会の精神に合致していると評価され、監督に抜てきされた。