ガンダム制作のサンライズ 系列音楽出版社が自社レーベルを持った理由
「機動戦士ガンダム」シリーズで知られるアニメ制作会社の「サンライズ」。そのグループ企業である「サンライズ音楽出版」が自社レーベル「SUNRISE Music Label」を今年9月に立ち上げた。アニメ関連の音源、CDなどのパッケージ商品をスピード感を持ってリリースできる…というメリットがあるというが、それってどういうことなの?同社に聞いてみた。
そもそも音楽出版会社とは、どういう仕事をしているのか。さまざまな楽曲は作詞・作曲など制作した人が「著作権」を持っている。この著作権を、制作者との契約により代理して管理したり、印税を配分したりする、のだが…一般にはレコード会社などに比べてなじみが薄いのも確かだ。
「映像を世に広めるところの近いところにいる立場として、音楽の著作権を取り扱うのがスタートでした」と、会社の成り立ちを説明してくれたのは「サンライズ音楽出版」のゼネラルマネージャーである黒田学さん。同社は従来も著作権管理のみならず、他社のレコード会社との共同レーベルでアニメ関連のCDを制作・販売する事業をしてはいた。それでも、自社レーベルを立ち上げたのには事情があるという。
「(音源を)アウトプットする場所として、一つの方法論としてレーベルという場所がほしかったんです」
例えば、他のレコード会社と共同で音楽CDを発売しようとすれば、その会社の都合も配慮しなければならない。しかし、自社レーベルなら「直接、ユーザーに責任を持って届ける」(黒田さん)ことができるというわけだ。
記念すべき第1弾はサンライズによる新作オリジナルアニメ「DOUBLE DECKER! ダグ&キリル」(ダブルデッカー ダグアンドキリル)のオープニングテーマ「ステレオとモノローグ」(12月5日リリース)。担当するバンド・霧雨アンダーテイカーをてがける。黒田さんらはアニメ制作を受けて、世界観に合う作品をつくった彼らと出会った。それを世に出す場として自社レーベル立ち上げを決めた、という流れだった。
当然、自社で流通・販売まで行う分、コストも人手もかかる。黒田さんも「自分たちで動いて世に広めていかないといけない」と口にする。反面、自分たちの手で作品にマッチした音楽、楽曲を追求できるメリットは大きい。「アニメ作品、世界観を核として、それだけを見て(楽曲を)採用したり、ビジネスを組み立てることは、他のメーカーさんを絡めるとできないと思います」。今後も「音楽制作・音楽プロデュースに力を入れながら、音源の販売は他社さんと協力したり、自社レーベルで取り扱ったり作品特性や状況に応じて」、制作のアプローチは選んでいくという。
そして、もう一つ自社レーベルの強みがある。サンライズが制作した数々の名作アニメの関連音源を“発掘”し、パッケージ化などの形でファンに届けられる点だ。
黒田さん「サンライズ作品の音楽原盤って本当に多いんです。アニメ作品自体も30周年記念だよ、15周年だよという時があるんですけど、掘り起こしの映像展開もしていますし、サンライズや(同じグループの)バンダイナムコピクチャーズと足並みをそろえて音楽の展開もできると思うんです」
膨大な量の音源が倉庫やサンライズの資料館に眠っていて、時にはモノラルで音源が保管されている作品もあるなど苦労も多い。その中から商品化する作業は、文字通りの“発掘”となる。さらに、旧作がゲーム展開や、バラエティー番組の企画などでにわかに注目を集める場合もある。そんな時にスピーディーに商品化してファンのニーズに応える。「ユーザーも多様化しているので、ニッチなところに照準を合わせないといけない」とファンのかゆい所に手が届く商品を心がけていくという。
2019年は「機動戦士ガンダム」の初回テレビ放送から数えて40周年となる。「来年中には、何かしらガンダムに関連する商品が出せると思います」と黒田さん。歴史的な名作から新作まで、作品ファーストのアニメ音楽をファンに届けてくれそうだ。