パスカルズのマツ 6年ぶりの新作「日々、としつき」と来し方を語る(前)
結成から23年を迎えた14人編成のインストゥルメンタルバンド「パスカルズ」が今年9月、6年ぶりのニューアルバム「日々、としつき」をリリースした。フランスを中心に海外でも人気の高いパスカルズのリーダー、ロケット・マツ(61)に、新作とパスカルズの“日々、としつき”について聞く、その前編。
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パスカルズは1995年1月、フランスの音楽家パスカル・コムラードのカバー企画ライブがきっかけで結成された。「自由度とシンプルなメロディーが合体」(マツ)した国籍不詳、唯一無二のサウンドに、元「たま」の石川浩司のユニークなパフォーマンスや火花を上げる坂本弘道のチェロなどのシアトリカルなステージもあいまって、カルト的な人気を獲得した。
また、前田敦子主演の連続ドラマ「毒島ゆり子のセキララ日記」や大林宣彦監督の映画「野のなななのか」、ケラリーノ・サンドロヴィッチ演出の舞台「祈りと怪物」の音楽を担当するなど、幅広く活動している。
新作「日々、としつき」は6年ぶりのアルバムで、その間にライブも行い、新曲も作られていたこともあり、「ライブでこなれて、(アルバムに)収録されていなかった曲を集めて一つの形にした」という、ナチュラルな流れで制作された。タイトルには「時間が堆積している23年」という意味が込められているという。
栗コーダーカルテットの関島岳郎が監修という立場に入り、エンジニアも初めて組む夏秋文尚ということで、マツは「ミキシングの細かいところが今までの自分たちと全然違う部分があった」と振り返る。
結果、「ミキシングの段階で関島くんの意識、色がけっこう入っていると思う」、「夏秋くんと関島くんの色で染まっていったって感じ」の、「今までのアルバムとはちょっとニュアンスが違う」、パスカルズとしてはスタジオ・レコーディング作品としての色が濃く出たアルバムに仕上がったという。
また、ギターの金井太郎作曲の「蝶」について、「挑戦というか新しいタイプの曲になったと思う。すごく斬新な部分があるし、今までにないアレンジ、演奏だったと思います」と自負。オクノ修のカバー「ハートランド」は「なかなかの聴いてほしい曲」といい、結成23年にして新生面も見せている。
大林作品やケラ作品のために作られた楽曲も収録され、マツは「架空のサントラじゃないけど、そういう景色をイメージしながら聴いていただきたいかな。聴きやすいものになったのではないか」と、穏やかな口調にできばえへの自信をにじませた。(続く)