「家政婦は見た!」“おばちゃん”をチャーミングに 愛された市原悦子さん
25年間続いた長寿ドラマ「家政婦は見た!」シリーズなどで知られる、女優の市原悦子(本名・塩見悦子)さんが12日午後1時31分に心不全のため都内の病院で亡くなったことが13日、分かった。82歳だった。千葉県出身。通夜は17日午後6時、葬儀・告別式は18日午前11時から東京青山葬儀所で営まれる。葬儀委員長は、所属するワンダー・プロダクション社長の熊野勝弘氏が務める。
「家政婦は見た!」の主人公・秋子は、市原さんにとって、思わず応援したくなる愛すべき存在だった。「汗を流して生きる姿がいとおしい」。秋子を演じ続け、市原さんは視聴者から愛された。
ドアの隙間から他人の家庭の秘密をのぞき見ていた秋子だが、夫や子はおらず、生活はつつましやか。「体調を崩して休んだら日当がもらえない。だから秋子は風邪をひかないよう、首にネッカチーフを巻いていたんです」と説明していた。
のぞき見についても「『何かを見たい』と思う欲求があるのは非常に知的で、健康的なこと。秋子には、知ってしまった真実への憤りがいつもあった」。好奇心旺盛で、エリートの傲慢(ごうまん)さに腹を立てる。そんな、どこにでもいそうな“おばちゃん”をチャーミングに演じた。
卓越した演技力で知られ、コメディーからシリアスまで幅広い役をこなした。アニメ「まんが日本昔ばなし」では語り手を約20年間、俳優の故常田富士男さんと務め、ゆったりと温かな語り口で親しまれた。その語りの速度には「もっとゆっくりしたい人、世の中の大きな流れから少し外れた人たちに、共感の焦点を合わしている」との信念があったという。