市原悦子さん死去82歳 みんなが見て育った…「まんが日本昔ばなし」
25年間続いた長寿ドラマ「家政婦は見た!」シリーズなどで知られる、女優の市原悦子(本名・塩見悦子)さんが12日午後1時31分に心不全のため都内の病院で亡くなったことが13日、分かった。82歳だった。千葉県出身。通夜は17日午後6時、葬儀・告別式は18日午前11時から東京青山葬儀所で営まれる。葬儀委員長は、所属するワンダー・プロダクション社長の熊野勝弘氏が務める。
ドラマ「家政婦は見た!」やアニメ「まんが日本昔ばなし」で知られる演技派が、突然この世から旅立った。所属事務所が公式ホームページで、「かねてより病気療養中のところ永眠いたしました」と報告した。
市原さんは俳優座養成所を経て、1957年俳優座に加入。同期に脚本家のジェームス三木氏(83)や声優の大山のぶ代(85)がいた。退団後には“2時間ドラマの顔”として活躍。75年スタートの「まんが日本昔ばなし」では、すべての役を常田富士男さんと2人で担当した。常田さんは2018年7月に死去。市原さんも「可愛い人でした」としのんだばかりだった。
83年に始まった主演ドラマ「家政婦は見た!」での家政婦・石崎秋子役が、市原さんにとって最大の当たり役。25年以上続き、エリート家庭の欺瞞(ぎまん)をぶちまける異色キャラで、平均視聴率30%超えの回もある国民的人気作となった。
今村昌平監督の映画「黒い雨」(90年公開)では、被爆後遺症に苦しむヒロインの叔母を好演し、日本アカデミー賞助演女優賞を受賞。ほのぼのからシリアスまで幅広い演技で愛された。
近年は、体調の優れない時期が長かった。2012年、大腸に腫瘍が見つかり、映画を降板。17年1月には「自己免疫性脊髄炎」による休養を発表した。同年夏に退院し、18年のNHK大河ドラマ「西郷どん」のナレーションで仕事復帰する予定だったが、放送前の17年11月に降板することが発表された。
18年3月からNHK「おやすみ日本 眠いいね!」の朗読担当として仕事復帰。死去後に放送された13日未明の放送回では市原さんが盲腸を患い、収録できなかったと説明されていた。
19日に開幕する女優・観月ありさ(42)の主演舞台「悪魔と天使」には、「神の声」として出演するはずだった。関係者によると、声を録音する予定だったが、体調不良によりかなわぬままだという。舞台は代役を立てて上演される。
市原さんは1975年から94年まで、アニメ番組「まんが日本昔ばなし」の声優を担当。常田富士男さんと2人だけで全1468話の登場人物・キャラクターの声を分担した。
15年に大阪・近畿大学で講演した際は、同番組について「意外に子供向けには作らず、教育的になることや、上から目線で語ることは避けました」と回顧。「入れ歯になっても、車いすに乗っても続けようと言ってたんです」と笑顔で明かした。
また、放送終了に至ったエピソードも披露。「『日本昔ばなし』は絵描きさんがとても丁寧に作ってくださって、制作費もかかって、テレビ局の偉い方々が安いほうに行っちゃったみたい」と市原さんらしいトークを繰り広げた。