山本達彦インタビュー(中)今までのロックにない音楽を作りたいなと思った

 シンガー・ソングライターの山本達彦(65)が23日、神奈川のモーション・ブルー・ヨコハマからツアー「The Trio 2019」をスタートさせる。1980年代にシティ・ポップスの旗手として数々のヒットを飛ばし、デビュー40周年を迎えた昨年はユニバーサルから4枚組BOX「Life In Music」をリリース。今なお精力的に活動する山本が語る“Life In Music”、その中編をお届けする。

  ◇  ◇

 山本がシティ・ポップスの源流と言える米国のAOR、ソフト&メロウといった音楽にひかれたのは「73年に大学に入ってから」だ。それまでは「13歳の頃からザ・シャークスというアマチュアバンドを学校の仲間と作って、GSの音楽、ビートルズ、ローリング・ストーンズ、タイガースのコピーをしたり、スパイダースを聴いたり」という音楽生活を送っていた。

 とはいえ、「どっちかというとポップロックが好きで聴いていた。ハードロックより、コーラスがきれいなサイモン&ガーファンクルも好きだったし、コーラスにエレキロックを組み合わせたバンドが理想でした」という辺りに、その後の片りんがうかがえる。

 54年生まれの山本にとって、高校~大学時代はロックが大きな広がりを見せた時期にあたる。

 「あの頃はいろいろな音楽が-バーズ、ジェファーソン・エアプレイン、ジミ・ヘンドリックスとか。音もだんだん大きくなって、プログレッシブ・ロックのキング・クリムゾンやエマーソン、レイク&パーマーとか、ロックも多様化してきて、ポップというよりコンセプチュアルになってきて」と振り返るように、サイケ、ハードロック、グラム、プログレ、カントリー・ロックといった新たなムーブメントが次々に生まれていった。

 そういった新しいロックを「時代の中で聴いて」いたものの、「大学になってちょっと重くなってきて」と、違和感も覚えていた山本がシティ・ポップスに至るきっかけが、75年頃、「原宿のメロディハウス、輸入盤屋のはしりに勤めて」いた下級生だ。

 その下級生が「いらなくなったレコードを試聴して買ってくれませんか?」と言って持参したレコードは、「今までと違って、シンガー・ソングライター(以下SSW)のものが」多かった。

 「それまで、そういうアメリカのSSWは、キャロル・キングは知っていましたが、新人の人もたくさん出てきているのが分かって、聴きあさって」

 ハードロックやプログレといったヘビーな音楽より、「もっと爽やかな、そういう音楽がいいな」という指向がはぐくまれる。高校まで組んでいたバンドも「メンバーも他のバンドに行ったりして、一人でできることはないか模索していた」時期でもあり、「作曲が好きだったのと、SSWにひかれて、そういうことをやりたくなって」いった。

 SSWの音楽の中でも、特に山本がひかれたものがあった。

 「75年になると(レコーディング機器やオーディオの)音も良くなったし、ソフィスティケートされたAORやソフト&メロウのはしり、ニック・デカロの『イタリアン・グラフィティ』(74年)とかマイケル・フランクス、ハース・マルティネスなんかよく聴いて。(レーベルでいえば)ワーナー、ベアズヴィル…」

 東京・吉祥寺のレコード店「芽瑠璃堂」に「ずっと入り浸って」、輸入盤のジャケットと、そこに記されているクレジットを熟視。「チャック・レイニーとデヴィッド・スピノザだったらどういう音になるか」といった思索を巡らせていた。

 そういった音楽を聴きあさり、「もっと都会的な、ロックというよりジャズのフレーバーがあって、コードも凝っていて、今までのロックにない音楽を作りたいなと思ったのが、デビューしてプロとして活動することになった大きな原動力に」なったという。

 ソロデビュー前、山本は故かまやつひろしさんのバンドに在籍し、曲も提供している。

 「アマチュア時代にムッシュをサポートしていた時に、既にそういう意識があって。マイケル・フランクスに影響を受けたり、いろいろなSSWを聴いて、スティーブン・ビショップがいいなと思って。自分で作っていた時に、ムッシュの『WALK AGAIN』(78年のアルバム)に2曲入れていただいて、それはソフト&メロウみたいな曲で。デビュー前にアメリカのSSWに影響された曲にトライして、書きためていた。ウーリッツァーのエレクトリック・ピアノでメロディーを書いて、ストックしておこうと思って。楽しかった」(続く)

 【フーズフー】

 山本達彦(やまもと・たつひこ)1954年3月4日生まれ、東京都出身。小2の時に東京少年少女合唱隊に参加、米ツアーを行い「エド・サリバン・ショー」に出演。高校時代は同級生の渡辺香津美とバンドを組む。74年、成蹊大在学中に「オレンジ」結成。シングル「翼のない天使」をリリース。78年、アルファと契約し、かまやつひろし、研ナオコ、郷ひろみらに楽曲を提供。同年9月、シングル「突風~サドゥン・ウインド」でソロデビュー。82年、アルバム「MARTINI HOUR」がオリコンチャート初登場2位。主な楽曲に「ある日この夏」、「サンライズ・ハイウェイ」、「夏の愛人」など。99年、レーベル「サイレンス」設立。

 【ツアー日程】

 ◇3月23日(土)神奈川・モーション・ブルー・ヨコハマ

 ◇4月4日(木)名古屋ブルーノート

 ◇4月5日(金)ビルボードライブ大阪

 ◇4月26日(金)東京・南青山マンダラ

 ◇4月27日(土)東京・南青山マンダラ

 ◇5月18日 千葉・ライブハウスMT Milly’s

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