山本達彦インタビュー(後)説得力があるか、似合っていることが大事
シンガー・ソングライターの山本達彦(65)が23日、神奈川のモーション・ブルー・ヨコハマからツアー「The Trio 2019」をスタートさせる。1980年代にシティ・ポップスの旗手として数々のヒットを飛ばし、デビュー40周年を迎えた昨年はユニバーサルから4枚組BOX「Life In Music」をリリース。今なお精力的に活動する山本が語る“Life In Music”、その後編をお届けする。
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学生時代、影響を受けた米シンガー・ソングライターのマイケル・フランクスやスティーブン・ビショップについて、山本は「(彼らが)どこか影響を受けているのは、CTI(プロデューサーのクリード・テイラーが70年に設立したジャズレコード会社)、ウェス・モンゴメリー、A&M(ハーブ・アルパートとジェリー・モスが設立したレコード会社)の匂いを感じる」といい、自身のソフト&メロウ、AOR論を次のように語った。
「セルジオ・メンデスのブラジリアンサウンドのように徹底的に洗練されて汗臭さがない、それが僕なりのソフト&メロウ、AORのイメージ。ロバータ・フラックとダニー・ハサウェイには、セルメンを聴いたとき以上のソフィスティケートされたフューチャーリスティックなサウンドを感じた。カーペンターズは和音の使い方、ミュージシャンの使い方などにA&M、セルメンっぽさを感じる。『雨の日と月曜日には』のサックスソロなど、こういうジャズミュージシャンを起用するか?という、白人独特の不思議な組み合わせの妙がありました」
山本が活動してきた40年強の間にはさまざまな流行があった。ニューミュージック、テクノポップ、バンドブーム、インディーズ、ビジュアル系、渋谷系、TKサウンド、ディーバ…現在、日本はグループアイドルやアニソンが花盛りで、米国ではヒップホップが主流になっている。
山本は「時代の潮流とか、全く考えなかったわけじゃない」と打ち明けつつも、こう語る。
「こんな洋服が今はやっているからって、似合ってもないのに着ても裸の王様になる、結局はね。そういう意味で思ったのは、絶対に説得力があるか、一番似合っていることが大事。それがジャブのように効いてきて、時代を作っていくと思う。最先端って、ある意味では一番古い物。無理のない、誰が見てもいいという自分であることが、一番大事だと最近、思う。若いうちは勘違いもまだ許されるけど」
山本にとってのAORは「汗臭くない。トゥーマッチ・ソウル、トゥーマッチ・ジャズじゃない、ソフトで押しつけがましくない心地よさ」であり、「今の僕が求めているサウンド。昔の僕に戻ったって感じがします」という、そんな音楽が、ザ・トリオのライブで聴くことができる。
「ライブはちょっとした一言で空気がよどんだり、音楽以外の人間性を見られることもある」という厳しさもあるが、今の山本は「基本的にはミスしても味にできるような感じ。音楽って楽しいと」という境地にいる。
「楽しく気持ちよく演奏して、皆さんが楽しく聴いて、明日の栄養になればいい。前回よりもっとソフト&メロウな落ち着いて聞けるナンバーを中心に、じっくりゆったりくつろいだ感じで聴いていただきたい」と、心地よい空間を約束していた。(終わり)
【フーズフー】
山本達彦(やまもと・たつひこ)1954年3月4日生まれ、東京都出身。小2で東京少年少女合唱隊に参加、米ツアーを行い「エド・サリバン・ショー」に出演。高校時代は同級生の渡辺香津美とバンドを組む。74年、成蹊大在学中に「オレンジ」結成。シングル「翼のない天使」をリリース。78年、アルファと契約し、かまやつひろし、研ナオコ、郷ひろみらに楽曲を提供。同年9月、シングル「突風~サドゥン・ウインド」でソロデビュー。82年、アルバム「MARTINI HOUR」がオリコンチャート初登場2位。主な楽曲に「ある日この夏」、「サンライズ・ハイウェイ」、「夏の愛人」など。99年、レーベル「サイレンス」設立。
【ツアー日程】
◇3月23日(土)神奈川・モーション・ブルー・ヨコハマ
◇4月4日(木)名古屋ブルーノート
◇4月5日(金)ビルボードライブ大阪
◇4月26日(金)東京・南青山マンダラ
◇4月27日(土)東京・南青山マンダラ
◇5月18日 千葉・ライブハウスMT Milly’s