SNSで話題の出産立ち会い休業の貼り紙「ご麺なさい」に込めたうどん店長の思い
東京・高田馬場にある、うどん店の店長が、妻の出産立ち会いのため臨時休業することを記した貼り紙がツイッターで話題になっている。単なる業務連絡でなく、夫として妻への気遣いや愛情がつづられ、お客さんへの謝罪の言葉「ご麺なさい」が反響を呼んだ。営業再開後の22日、同店を訪れ、うどんを食べてから、ご本人に貼り紙を書いた経緯や心境、ネットでの反響に対する思いを聞いた。
福岡市西区に本店があるうどん店「大地のうどん」の「東京馬場店」で店長を務める阿部修さん(36)。福岡で生まれ育ち、3年前に九州以外では初の店舗となる同店オープンと共に上京。“東京総司令官”の肩書で店を切り盛りする。妻の香織さんとは東京で生活しているが、福岡で里帰り出産。今月19日、妻と初めて生まれる子供の顔を見るため、新幹線で東京から福岡に向かった。その日、店の入口に紙を貼った。
「本日夜の営業をお休みさせて頂きます。足を運んで頂いたお客さん誠に申し訳ございません。私事ではありますが、妻がお産を無事終えた為、ありがとう、そして愛してると伝えたい衝動が抑えられず、福岡に帰らせて頂きます。勝手な都合で本当にご麺なさい」
ツイッターでは「うどんを食べに来たのだが…これは反論できない」「最後の一文にプロ意識を感じる」「最後のご麺なさい、最高です」といったコメントが書き込まれた。中には「妻」が「麦」のような文字になっていたことを親しみを込めて指摘する声もあったが、率直な思いが好意的に受け止められた。
阿部さんが東京に戻って営業を再開すると、知人や常連客だけでなく、「ツイッターを見て店を知った」という初来店客から「おめでとう」と祝福された。阿部さんは「すごい反響で驚いています。東京の人はやさしいですね」と感謝した。
この貼り紙について、阿部さんは「字を間違えてお恥ずかしいです。『妻がお産を無事終えた為』と書きましたが、その時はまだ生まれておらず、あわてて書いてしまいました。最後の文字には麺職人としての誠意を込めたつもりです。このうどんを広めるために東京に出て来て、初めて私用で休ませていただいた。それが本当に申し訳ないと思いまして」と心境を明かす。
「(麺の)切りたて」「ゆでたて」「(天ぷら)揚げたて」の「三たて」を掲げる同店。名物の「ごぼう天うどん」を食べた。天ぷらはサクサク、麺はゆで置きしていないため透き通っていた。阿部さんは「福岡のソウルフードです」と、この日も厨房でうどん作りに精を出していた。
ちなみに、新幹線の中で出産を聞いたという。「その瞬間には立ち会えなかったのですが、3810グラムの女の子でした」。この貼り紙ははがしたが、東京の家で大切に保管している。阿部さんは「娘が大きくなった時、生まれる時の思い出として親子で一緒に見ようかなと」。父親の顔でほほ笑んだ。(デイリースポーツ・北村泰介)